TATTOO COLUMN
第6話 トラブル
▼前回までのあらすじ------------------------------------
思いがけない海辺での写真撮影によって、大きなトラブルを呼んだ梨奈。
仲間の直美が波の高い海に転落するという一大事を、暴走族のヘッドである高浜の命令により一命を取り留める。
その後、強面の高浜達とは和解し、刺青師牡丹を応援してくれることになった。
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海辺での写真撮影は予想外の反響があった。
タトゥーコンベンションなどで写した写真をアップされた場合は、一部のタトゥーマニアの間で話題になる程度だろう。
けれどもサーフィンの名所で行われた、全身にタトゥーがある女性の撮影会の写真や動画、ということで、一般の人たちも関心を抱いた。
その現場にいなかった人たちも、さらに梨奈の写真や動画をコピーして、それをどんどんネットに広めてしまった。
インターネットの掲示板などで、梨奈は
「後先考えずに、全身に入れ墨をしたバカ女」
と非難された。
「常識がない」
「日本では入れ墨は受け入れられないのに、バカなことをする」
「入れ墨するやつらは、みんな頭がわるい」
というような否定的な書き込みが多くなされた。
中には写真の人物がピオニーのアートメイクスタッフということを知っている人がいて、わざわざそのことをツイッターに投稿する人もいた。
日本よりタトゥーに関心が高い海外でも、多くの人が梨奈の動画を視聴した。
宣伝による収入を得るため、動画をいろいろと加工してネットに流す者まで現れた。
騒ぎの原因を作った富夫は、梨奈に申し訳ないと何度も謝罪した。
けれども梨奈は富夫を恨むことをせず、落ち込んでいた富夫を逆に励ました。
掲示板などを見て、知人の一人が梨奈のタトゥーを知ってしまった。
彼女は他の友人にもそのことを配信し、結局梨奈が全身にタトゥーをしていることを、多くの友人に知られてしまった。
それでもその騒動はやがて下火になった。
ピオニー店長の和美もインターネットを見て、梨奈のタトゥーが話題になっていることに気づいた。
それまで梨奈のタトゥーを容認していた和美も、騒ぎが大きくなってしまったことを懸念した。
今のところ特に問題はない。
それどころか、
「きれいなタトゥーがあるスタッフの方は、腕もよく、とても親切でした」
というような書き込みがいくつもなされて、
「タトゥーがあるアーティストさんにお願いしたい」
と梨奈を指名する客が増えた。
一〇月中旬に “大名古屋タトゥー大会”が、昨年と同じ大須の会場で開催された。
梨奈は久々に日曜日に休暇をもらい、七海と共にタトゥー大会に参加した。
今回もバイクギャングロッカーズがライブを行った。
ライブのときはいつも特攻服を着ているが、タトゥー大会ではタトゥーが見えるよう、ノースリーブのシャツ、または上半身裸だ。
ヘアはモヒカンにしたり、派手に染めたりしている。
この日のためだけの、特別のヘアスタイルだ。
翌日には仕事があるので、タトゥー大会が終わればすぐ、地味な色に染め直し、また丸刈りにする。
さすがに派手な髪の色やモヒカンカットで職場に出ると、上司のひんしゅくを買う。
赤羽海岸で知り合ったサーファーたちや韋駄天疾風会のメンバーも来てくれ、久闊を叙した。
梨奈や七海たち、バーベキューに参加した仲間全員が親しく挨拶を交わした。
疾風韋駄天会のメンバーは、真夏の赤羽海岸で応戦したときは、ティーシャツの上に薄手の甚兵衛などの軽装だったが、今回は皆特攻服を着ていた。
特攻服には日の丸や
「愛国」
「神風」
などの刺繍が施されていた。
レディースも特攻服姿だ。
バイクギャングのメンバーは自分たちよりずっと年上なので、疾風韋駄天会の面々は恭しい態度で対応した。
彼らは納得さえすれば、礼儀を重んじる。
高浜は二一歳だが、それ以外は多くが未成年だ。
高浜はヘッドを退き、別の者に譲っていた。
「いい年こいていつまでも突っ張っていられないから、そろそろ正業に就きますよ」
高浜はバイクギャングのメンバーたちに、照れくさそうに言った。
梨奈は今回、ジュンやコージに要請され、水着に近い服装をしていたので、注目を浴びた。
去年見かけた、頭に牡丹を入れているスキンヘッドの女性も来ており、
「あら、あなた、去年ジュンさんに、お尻に牡丹入れてもらってた人ね。あれから全身に彫ったの。すごいね」
と梨奈に話しかけてきた。
彼女は腕や背中などにもタトゥーを入れている。
「頭の牡丹、きれいですね。頭は痛くなかったですか? ふだんは髪を伸ばしているのですか?」
梨奈は彼女に質問した。
「頭はラインはそれほど痛くなかったけど、ぼかしが痛かった。やっぱグラデーションをつけるため、同じところを何度も針でなぞられたからかな。さすがにふだんは髪を伸ばして、タトゥーを隠してるよ。
髪が伸びるまでは、ヅラかぶってる」
そう言ってスキンヘッドの女性は笑った。
頭の牡丹はジュンに彫ってもらったという。
梨奈は彼女と電話番号やメールアドレスの交換をした。
タトゥーコンテストでは、ジュンが彫った鳳凰や牡丹のタトゥーは高い評価を受け、全身の部で梨奈が優勝した。
多くの人から写真を写させてほしいとリクエストされた。
またタトゥー専門誌のカメラマンからも、要請を受けた。
タトゥー専門誌には、“タトゥーアーティスト牡丹”として紹介してくれるという。
この日の梨奈は一段と輝いていた。
梨奈がアートメイクのスタッフとなり、一年以上が過ぎた。
ピオニーのアートメイクのアーティストとして、梨奈は着実に地位を固めていった。
タトゥーの依頼も増えた。
プロのタトゥーアーティストとして開業しているのではないので、依頼はバイクギャングのメンバーから紹介があった場合のみ受けている。
それでもバンドつながりで、けっこう依頼があった。
女性からの依頼も多かった。
梨奈は最近自宅を出て、2DKの安いアパートを借りている。
自宅は名古屋市東区の矢田で、ナゴヤドームから少し北へ行ったところだ。
ピオニーへの通勤は名鉄瀬戸線と地下鉄名城線を、栄駅で乗り換えている。
通勤には徒歩などを含め、50分ほどかかる。
転居先は昭和区の鶴舞公園の近くだ。
地下鉄やJR中央本線の鶴舞駅まで徒歩約10分で、通勤はずっと便利になった。
梨奈は全身にタトゥーがあり、銭湯には行きづらいので、浴室があることが絶対条件だった。
交通が便利で、古い建物であることを除けば、けっこういい住まいだ。
アパートに転居することについて、父親はいい顔をしなかった。
しかし母親は一人暮らしの体験も必要だからと、梨奈を後押ししてくれた。
一緒に暮らしていると、タトゥーが父親にばれるといけない、という心配もあった。
母親としては、娘が全身にタトゥーを入れていることを、なるべく父親に隠しておきたかった。
父はときどき実家に帰ることを条件に、一人暮らしを許してくれた。
アパートに移ったので、梨奈は自宅でタトゥーの施術をした。
けれどもマシンの音が大きいので、夜遅い時間に彫ることは避けていた。
希望者には、できるだけ梨奈が休みの、平日の昼間に来てもらっていた。
夜にしか来られない場合は、九時前には施術を終えるようにしている。
今ではプロの彫り師と比べても遜色ないので、一時間5,000円をもらっていた。
バイクギャングロッカーズのメンバーからも、
「一人暮らしは金がかかだろうから、少しは金をもらっとけよ。オートクレーブやウルトラソニック(超音波洗浄器)も買わなきゃならんだろう」
と助言された。
今はメガネ用の超音波洗浄器で代用している。
梨奈は施術のとき、滅菌済みの針やチューブは、必ず客の目の前で開封するようにしている。
また、圧力鍋を使って滅菌する場合、客が来る前からコンロに圧力鍋をかけ、客に三〇分以上煮沸していることを誓約した上で、針やチューブを取り出している。
針の種類によっては、滅菌済みのものが手に入らない場合もある。
とにかく衛生面には十分配慮していることを、客にアピールしていた。
ピオニーの店長の和美は、梨奈がタトゥーアーティスト牡丹として、休日にタトゥーを彫っていることを了承している。
本来なら兼職することは遠慮してもらいたいのだが、梨奈の場合は本職の彫り師ではなく、客の数も多くないことで、大目に見ていた。
梨奈の背中のタトゥーはけっこうピオニーの客にも話題になっている。
今や梨奈のタトゥーはトレードマークともいえた。
アートメイクをした客の中には、
「ここではタトゥーを彫ってくれないのですか?」
と尋ねる人もいる。
インターネットの影響力の大きさを思い知らされた。
ピオニーでボディーアート部門を作ることを検討していた。
タトゥーではなく、ボディーアートという呼称にした。
本物のタトゥーばかりではなく、一週間ほど持つボディーペイントも扱うからだ。
タトゥーはファッションタトゥーと名付けた。
数年で消えるタトゥーを売り物にしているサロンもあるが、実際は一度彫ってしまえば、きれいに消えることがないので、そのような“看板に偽りあり”というものは取り上げない。
佳枝が何年も前に、アートメイクのように数年で消えるということを真に受け、ビューティーサロンで蝶を彫ってもらった。
しかし中途半端に薄くなっただけで、完全には消えなかった。
絵柄がぼけてしまってみっともないので、上からきれいなアゲハチョウを彫ってカバーアップした。
数は少ないが、最近エステティックサロンやビューティーサロンで、タトゥーを扱っているところもある。
タトゥースタジオのような大きなものは彫らず、ワンポイントに限定しているところが多かった。
ビューティーサロンのクライアントの多くは女性で、タトゥースタジオと客層も違うので、和彫りのような大きな絵を要求する人はほとんどいない。
和美はボディーアートを行っているサロンに問い合わせ、情報収集などもした。
地元の競合しているサロンはなかなか問い合わせに応じてくれないが、関東や関西の、友好関係にあるサロンはいろいろ教えてくれた。
また、インターネットでも情報を集めた。
そして、ボディーアートも十分採算が合いそうだと判断した。
ビューティーサロンなどでは、タトゥースタジオより高い値段設定にしているところが多い。
衛生面の徹底管理をアピールし、安全性へのコストだということをキャッチコピーにしていた。
タトゥースタジオも最近は衛生管理をしっかりしている。
フェニックスタトゥーは、ピオニーに勤務する梨奈の目で見ても、衛生面は万全だった。
しかし中には怪しいところもあるということを、梨奈は聞いている。
ボディーアート部門設立を視野に入れ、梨奈はボディーペインティングの研究もした。
和美は他のサロンが行っているボディーペインティングの講習に、梨奈を派遣させもした。
もちろん、後々トラブルが起きないよう、身分をきちんと告げている。
梨奈の技術を確認するため、佳枝が梨奈にタトゥーを彫ってもらうことを志願した。
右の太股に赤い菊と青い蝶を入れることとなった。
梨奈は空いている時間に、下絵を作った。
他の予約が入っていない時間帯に、施術は行われた。
店長の和美やスタッフたちが施術を見守った。
スクール生も見学したいというので、その場に立ち会った。
今回は梨奈の技術を確認するための施術だが、本番さながらにカウンセリングを行い、承諾書やカルテも記入した。
この二種類の書類は、アートメイクのときに必ず作成する。
ボディーアートでも、肌に傷をつけないペインティングでは使用しないが、ファッションタトゥーの場合は作成することとした。
カルテとは万が一トラブルが発生した場合、迅速な対応ができるよう、アートメイクのスタッフに作成を義務づけた記録簿のことだ。
医師でもある和美が、“カルテ”と名付けたのだった。
依頼者の住所、氏名、年齢、生年月日を記入し、施術する場所や絵柄、使用したインクの色やメーカー、製品番号や記号などを記入する
ピオニーの施術室は、衛生管理が万全だった。
タトゥーマシンのチューブなどは超音波洗浄器で洗浄してから、オートクレーブで滅菌した。
ピオニーでは消耗品は滅菌してあるものを使い、完全に使い捨てをしているので、オートクレーブや超音波洗浄器を使う機会がめったにない。
アートメイクマシンは、針やキャップ、スリーブなどの消耗品を滅菌パックに密封した状態で、紫外線殺菌保管庫に保管してある。
最近梨奈は滅菌済みの使い捨てのプラスチックチューブを使うことが多いが、やはり金属製のチューブのほうが適度なグリップがついていて、使いやすかった。
梨奈は転写からライン、色づけなどそつなくこなした。
完成した絵もかなりの出来栄えだった。
梨奈はタトゥーアーティスト牡丹として、もう何十人もタトゥーを彫っているので、ぐっとスキルアップしていた。
佳枝も新しく入れたタトゥーに満足した。
「これなら50,000円ぐらいもらえるわね」
和美がそう言ったので、梨奈は驚いた。
「え、50,000円ですか? とてもそんなにもらえませんよ。私だったら、15,000円です」
施術は三時間半ほどなので、一時間5,000円で彫っている梨奈の料金では、一時間未満は切り捨てで15,000円だ。
「ほかのボディーアートを行っているサロンの相場だと、それぐらいの大きさで50,000円ぐらい取ってるわ。これだけきれいに彫れれば、十分事業として成り立ちそうね」
もちろん50,000円がそのまま梨奈の収入になるわけではなく、アートメイクと同じように歩合制で手当をもらえることになる。
スクール生も花柄を入れてみたいと希望したので、その場で図柄を相談した。
小さな赤いバラを右の足の甲に入れることになった。
滅菌などの準備ができてから、施術をした。
スクール生にも本番と同じように、カルテを作り、承諾書にサインをしてもらった。
五〇〇円硬貨より少し大きい程度なので、正味30分程度で施術が終わった。
スクール生は無料でタトゥーを入れてもらえ、喜んでいた。
ピオニーでは、新年より正式にボディーアートを始めることとなった。
それまでに、ボディーアート部門設立に向けての準備をしなければならない。
パンフレットやホームページにも、さっそくボディーアートを始めることを付け加えた。
マシンなどの器材はサロンの負担で用意してくれる。
梨奈の個人所有のマシンは、持ち込む必要がなかった。
和美はデジタルマシンという、ドイツ製のアートメイク用マシンを、ファッションタトゥー専用に一台購入してくれた。
このマシンはアートメイク用だが、タトゥーにも十分使用できる。
タトゥー用に、上位機種の、よりパワーが強いものを選定した。
従来のアートメイクマシンに比べ、針のぶれがなく、より早く、正確な施術ができる。
専用のコイルマシンより使いやすく、疲労も少ない。
ニードルはカートリッジ式となっており、着脱が容易だ。
もちろんカートリッジは滅菌した上、厳封されている。
梨奈は最近、アートメイクでは手彫りをするとき以外は、デジタルマシンを使っている。
使い慣れたマシンでタトゥーを彫れることはありがたかった。
梨奈も個人で所有したいと思うが、一台数十万円するので、購入するのは困難だ。
バイクギャングの仲間たちは、梨奈がタトゥーアーティストとしてプロデビューすることを喜んだ。
ただ、ピオニーでは安く彫ってもらえないことが残念だった。
いくら仲間でも、今までのように一時間5,000円でやってくれとは頼めない。
それにアートメイクサロンなので、男性は行きづらい。
みんなはなじみのクラブで祝賀会を開いてくれた。
沙織が勤めるクラブでは、沙織がみんなと一緒に盛り上がれないので、仲間内で集まるときには、別の店に行くことがある。
もちろん沙織の成績を上げるために、沙織のクラブに集まることも多い。
今回は沙織自身も友として“牡丹”のプロデビューを祝うために、別の店で開催することを希望した。
最初にビールで乾杯をした。
「おい、牡丹、がんばれよ」
「いよいよ念願のプロのタトゥーアーティストになれるのね」
「私、ピオニーにタトゥー入れに行くね。来年から始めるんでしょう」
七海がさっそく客としてタトゥーを入れに行くと約束した。
「俺たち、しがない契約社員だから、何万円も出してとても彫れないけど、牡丹を応援しているからな」
政夫と康志、富夫はまだ正社員となれないので、経済的に余裕がない。
ピオニーでは、五〇〇円玉サイズで10,000円、たばこの箱サイズ30,000円、はがきサイズで50,000円を予定している。
同業者の料金を調査し、梨奈の技術を考慮した上で正式に決定する。
フェニックスより高い料金設定で、梨奈としては申し訳なく思うが、料金を決めるのは店長の和美だ。
ピオニーでは衛生管理を徹底しており、その安心感を価格に上乗せするのは当然のことだ。
衛生管理にはコストがかかる。
和美は医師免許を取得しており、医師としての指導を徹底している。
和美は外科が専門だが、ピオニーで具合がわるいスタッフや客がいると、診察して的確に指示を出すこともある。
淑乃と直美もアートメイクやボディーアートをやりに行くね、と言ってくれた。
祝賀会の席で、バイクギャングロッカーズの新しいCDを間もなく出すという発表があった。
録音はいつも練習している音楽スタジオで行った。
録音したときは、梨奈は勤務中で、見学することができなかった。
デジタル録音されたデータをもとに、富夫がパソコンを使ってCD-Rに焼く。
前回は100枚を完売したので、今回は300枚出すそうだ。
ジャケットのカバーは、赤羽海岸で写した梨奈の鳳凰の写真を使いたい、と改めて申し出があった。
CDのタイトルも、ずばり“フェニックス”だ。
梨奈の写真は間もなく発売されるタトゥー雑誌にも掲載される予定なので、使用を承諾した。
それに、すでにネットなどで裸の写真がばらまかれてしまっているので、今さら恥ずかしいという気持ちはなかった。
今回はCDだけではなく、MP3の形で配信することも検討しているそうだ。
梨奈はフェニックスタトゥーにも、今勤めているピオニーでボディーアートのスタッフになることを報告した。
性器へのピアッシングの予約をしてあったので、閉店間際の九時前にスタジオに行った。
プロとしてタトゥーを彫ることを聞いて、コージもジュンも梨奈を激励した。
受付や事務を担当しているリョーコも声援を送ってくれた。
去年のタトゥー大会で、もしリョーコが声をかけてくれなかったら、タトゥーを入れることもなく、今ごろはアートメイクだけをやっていただろう。
リョーコもタトゥーアーティストを目指し、勉強中だそうだ。
最初は事務担当として三年前に採用されたが、タトゥースタジオで働いているうちに、やはり自分もタトゥーアーティストとして活躍したくなった。
リョーコ自身もかなり大きくタトゥーを入れている。
「やっぱり牡丹の名前でやるの?」
「はい。せっかくバイクギャングの仲間たちがつけてくれた名前なので、アーティスト名は牡丹でいくことを許可してくれました。
お店の名前もピオニーですし」
ジュンに尋ねられ、梨奈はそう答えた。
「がんばれよ。これからわからないことがあったり、壁にぶち当たったりしたら、いつでもうちに相談に来ていいからな」
コージが励ました。
コージはメガネをかけた、温和な顔立ちだ。
腕に大きなタトゥーがなければ、タトゥーアーティストというより、サラリーマンというほうがイメージに合っている。
梨奈はこれまでワンポイントをかなりこなしてきたので、あまり心配していない。
しかし、背中一面など、大きなものを依頼された場合が心配だ。
大きな絵は全く経験がない。
まあアートメイクサロンでのタトゥーなので、大きな絵の注文はないだろうと思う。
そんなことをコージとジュンに話した。
「そうだな。確かにワンポイントと背中一面では、全然プレッシャーが違うからな。ジュンも初めてお客さんから背中一面に彫ってくれと言われたとき、めちゃくちゃ緊張しとったからな。あのときも鳳凰だったよな」
「ええ。初めて背中に大きく鳳凰を彫ってくれと言われたときは、私もパニック寸前になりましたから。もう五年ぐらい前ですかね。うちのようなタトゥースタジオなら、ときどき大物の依頼があるけど、アートメイクサロンではまずないと思いますよ。大物彫りたいお客さんなら、最初からタトゥースタジオに来ますから」
ジュンも笑いながら、当時のことを思い出した。
「もし背中一面を希望するお客さんが来たら、コージさん、ジュンさんを紹介します」
「大物のお客さんを紹介してもらえれば、うちもありがたいな。でも、梨奈さんも大きな絵を彫れるよう、がんばれよ。いつでも相談に乗るからな」
「はい、ありがとうございます」
フェニックスタトゥーの二人が親身になってくれ、梨奈は嬉しかった。
話が一段落ついてから、性器へのピアッシングを行った。
ジュンと同じクリトリスだ。
痛そうで怖かったが、ジュンと同じになりたかったので、梨奈は思い切って予約をした。
プロのタトゥーアーティストになる記念でもあった。
ピアッシングはコージが行った。
場所が場所だけに、男性のピアッサーだと少し恥ずかしかった。
ジュンもコージに開けてもらったのだそうだ。
施術のとき、梨奈はタトゥーを彫ってもらうときとは比べものにならないほど緊張した。
ニップルやネーブルへの施術の比ではなかった。
男性に局部を見られる恥じらいもあった。
ピアスを装着する部分を消毒し、穴を開ける位置を決めてから、
「いきますよ」
と言って、コージは一気にニードルを突き刺した。
ニードルは滅菌済みのものを使う。
もちろん使い捨てだ。
バーベルタイプのピアスは、雑談をしているうちに、オートクレーブで二〇分間かけて滅菌してあった。
ピアスの素材はサージカルステンレスを使ってある。
ピアッシングのときも、タトゥーと同じように、衛生面には十分配慮されている。
ニードルに貫かれた瞬間、激痛が走り、梨奈は思わず叫び声を上げた。
一瞬の激痛は、タトゥーをはるかに上回るものだった。
コージはニードルを移動させ、その後ろにピアスを続けて穴に通した。
そして、ボールをねじ込み、固定する。
この間、数秒だった。
作業は終わり、痛みは去った。
出血があるので、しばらくは安静にしているように言われた。
「今夜寝ている間に出血し、下着などを汚すかもしれないけど、心配することはないですよ。それから、セックスはしばらく控えてください」
コージは施術後の衛生に関することなど、注意事項を梨奈に伝えた。
そのことはもらった注意書きにも書いてある。
「残念ですけど、今彼氏いませんので。寂しいですが」
梨奈はおどけてそう応えた。
「痛かったでしょう。私のときは、痛くて涙が出ましたよ。やっぱり感覚が鋭敏なところだけに、めちゃ痛いですね。でも、あえてそれをやった梨奈さんは、すごく勇気があると思います。それだけの勇気があれば、タトゥーの世界で十分やっていけますよ」
ジュンもコージからは見えないように、そっと同じ場所に着けたピアスを見せてくれた。
ジュンは背中はもちろん、胸や腹など、顔以外のほぼ全身にタトゥーが入っている。
「やっとジュンさんと同じになれて、嬉しいです。ニップルとネーブルも同じですし。そのうち、ジュンさんみたいに、全身にタトゥーを入れてみたいと思っています。そのときはまたジュンさんにお願いします」
「私と同じになりたいと言ってくれるのは嬉しいけど、手の甲はやめておいたほうがいいですよ。隠しようがないですし。私も手の甲や首は失敗したかな、とちょっとだけ後悔しています。やっぱりときには変な目で見られますから。まあ、私は一生タトゥーアーティストをやっていくつもりだからいいですが、梨奈さんはアートメイクもありますし」
ジュンはあまり大きくタトゥーを入れすぎないよう、梨奈をたしなめた。
一時間ほどジュンやコージ、リョーコと雑談をしてから、梨奈はフェニックスタトゥーをあとにした。
出血は止まっており、じっとしていれば痛みはなかった。
ただ歩くと、下着と擦れて少し痛かった。
そのせいで歩き方がちょっとおかしかった。
性器へのピアスは、梨奈の覚悟の表明だった。
これだけの苦痛に耐えたのだから、今後どんなことがあっても、決して負けまいと梨奈は決意した。
フェニックスタトゥーの人たちが応援してくれるのが嬉しく、また心強かった。
師走に入ったある日、梨奈は珍しく男性客の予約を受けた。
眉が薄く、弱々しい感じなので、眉にアートメイクを施してほしいというのだ。
会ってカウンセリングをすると、確かに男性としては眉が薄く、精悍さがない。
どんなイメージを望むのか、話し合いながら、方針を決めた。
「最初はアートメイクなんて恥ずかしくて、男ができるかと思っていましたけどね。いれずみで眉を描いてもらおうとも思ったけど、タトゥーをしている友人から、アートメイクとタトゥーは違うから、専門のところに行ったほうがいいぞと言われて」
山木昭宏という二〇歳の青年は言った。
ピオニーでは二〇歳未満には、アートメイクの施術を受け付けない。
「そうですね。その方のおっしゃるとおりですよ。タトゥーだと、不自然な仕上がりになります。恥ずかしいと言いながら、専門のアートメイクを選んだ山木さんは、正解だったと思いますよ」
「先生は大きないれずみしてると知って、この先生になら話を聞いてもらってもいいかな、と思い切って電話しました。やっぱり普通のアートメイクの先生では、男がやるのはちょっと恥ずかしいから」
「あら、それじゃあ私は普通じゃないみたいですね」
梨奈は笑いながら対応した。
海辺の出来事以来、私のタトゥーのことは、もうかなり知られてしまっているのだ、と梨奈は改めて思った。
けれども場合によっては、タトゥーがプラスに働くことがないではない。
少なくともピオニーでは、一般の会社のように、タトゥーが排斥されることはない。
確かに客のほとんどが女性であるピオニーに、男性は相談しにくいと思われる。
梨奈に大きなタトゥーがあるからこそ、この男性は女性の園ともいうべきアートメイクサロンに相談してみようと決断できたのだろう。
メンズ専門のアートメイクサロンもあるにはあるが、まだ少ない。
万一、専門外のタトゥーアーティストに眉を描いてもらったりしたら、一生後悔することになる。
それがたとえ、メイクに詳しい女性アーティストだとしても。
やはりタトゥーとアートメイクは、原理的に同じとはいうものの、全く違った技術なのだ。
「眉が自然に見えるように、3Dメイクで、一本一本手彫りで丁寧に書き込んでいきますね。
だいたいこんな感じです」
梨奈は自分が施術した女性の写真以外にも、和美が男性の眉に行ったアートメイクの写真を、見本として見せた。
梨奈はまだ男性に施術した経験がないので、和美の写真を借りた。
施術前と施術後では、明らかに違っている。
施術後はきりっとした、引き締まった表情になっている。
「こんなに変わるんですね。僕もこの写真の人みたいに、かっこよくなれますか?」
「はい。眉をしっかり整えることによって、かなり印象が変わってきますよ。私が腕によりをかけて、山木さんの良さを引き出して、女性から見て、すてきと思える眉にしてさしあげます」
梨奈の説明を聞き、山木は納得したようだった。
自分もこのような精悍な顔になれるのかな。
写真を見て、それまで緊張していた彼の表情が少し緩んだ。
梨奈はカウンセリングをしながらカルテを作成した。
そして承諾書にサインをしてもらった。
衛生面についても丁寧に説明したが、
「先生を信頼していますので」
と言いながらも、あまり真剣には聞いていないようだった。
衛生面のことは非常に大切であり、十分に理解してもらいたいのだが、難しく思えたのだろうか。
施術前にデジタルカメラで山木の写真を撮った。
その写真はカルテにと共に保存する。
万一アートメイクでトラブルがあった場合に備えて、使用したカラーや施術場所などをしっかり記録しておかなければならない。
梨奈が施術したカルテは、最初にモニターをお願いした七海の分から、すべて保存してある。
初めての男性への施術で、梨奈は少し緊張した。
梨奈はいつもにも増して、注意深く針を運んだ。
一時間半近くかけ、施術は終了した。
男性の肌、ということで、慎重になったせいか、いつもよりかなり時間がかかった。
また、山木は施術中に顔を動かしたりするので、余計に手間取った。
山木に限ってのことで、男性は皆がそういうわけではないのだろうが、女性に比べれば、落ち着きがないように思われた。
それでも出来栄えには満足できた。
今まで締まりがなかった顔が、引き締まって見えた。
眉一つでも、印象がかなり変わってくる。
しばらくアイマスクで施術部分を冷やしたあと、山木は鏡に見入った。
「え、これが僕? けっこうかっこよくなりましたね。今まで眉毛がない、なんて馬鹿にされたけど、これならもう大丈夫」
山木も出来栄えには満足した。
「今日は薄めにやっておきましたが、二週間から一ヶ月間を置いて、二回目の施術をします。たぶん二回できれいに仕上がると思いますよ」
「え、まだやるんですか? これで十分じゃないですか。僕はこれでいいです」
「いえ、今は施術直後なので、濃く見えますが、しばらく経つと薄くなりますので。このあとわずかな修正なども加えて、きれいに完成させます。アートメイクは二回以上の施術をお客様にお願いしています。すでにお話ししていますが、二回目以降は、料金もぐっとお安くなっています」
山木は何度もアートメイクサロンに足を運ぶのはかっこわるいとか、施術はちくちくして痛いので、もうやりたくないなどと、まるでだだっ子だった。
そんな山木の態度に、梨奈も少しむっと来た。
梨奈は
「自分がりりしくなるためでしょう!」
と怒鳴ってやりたい気持ちを、ぐっと抑えた。
梨奈はいろいろ説明して、何とか山木に二度目の施術を受けることを納得させた。
山木は三週間後に次回の予約を入れた。
女性客にはこんなことでごねる客はまずいないが、男性はめんどうだなと梨奈は思った。
まあ、これは山木に限ったことであろうが。
そのとき、ふと、
「この人、ケアをしっかりしてくれるだろうか?」
と一抹の不安を感じた。
それで梨奈はアフターケアの説明書を一緒に読みながら、しっかり施術後の注意点を説明した。
「初めての男性客、どうだった?」
施術が終わってぐったりしている梨奈に、和美が尋ねた。
「すべての男性があんなじゃないと思いますが、やっかいなお客様でした。施術中に落ち着きなく動くし、一回だけでいいじゃないかとごねるし。ケアをしっかりしてもらえるか、心配になりました」
梨奈は珍しく、客のことで愚痴を言った。
「男性が皆そういうわけじゃないから。私は何人か男性にも施術したけど、女性と同じように、きちんとしてたわよ。女性のお客様にも、たまには変な人がいるから。これから男性も身なりを飾る時代になるから、男性のお客様も増えると思うわ。何事も経験よ」
和美はいろいろなタイプの客がいるので、いちいち客の対応に腹を立てないよう、梨奈をたしなめた。
年末の休みが間近に迫ったころ、山木が二回目の施術に訪れた。
案の定というべきか、梨奈の心配が的中した。
山木に施したアートメイクは、カラーが抜けて、ほとんど残っていなかった。
梨奈はこれまでケアをどうしていたかを山木に尋ねた。
施術した部分が気になり、絶えず指で触ったという。
山木の職場はガソリンスタンドだ。
エンジンルームを点検したり、パンク修理をした指で眉をこするのは、あまり清潔とはいえない。
できたかさぶたも、無理やりめくってしまった。
そのようなでたらめなことをしていれば、きれいにカラーが残るはずもない。
今までアートメイクをやってきて、こんなに腹が立ったのは初めてだ。
せっかく全力を込めて施術してあげたのに。
梨奈は頭にきて、山木を怒鳴りつけてやりたい衝動に駆られたが、何とか感情を抑えた。
化膿しなかっただけでもよかった。
もし夏だったら、化膿していたかもしれない。
そんなことになれば、いくら客のアフターケアがわるかったのだといっても、サロンの責任を問われかねない。
梨奈はあえて気持ちを切り替えた。
「山木さん、ちょっとケアが適切ではなかったようですね。せっかく入れたカラーが、ほとんど抜けてしまっていますよ。きちんとケアをしていただけないと、今日施術しても、また同じようなことになってしまいます。それではやっても料金も無駄になりますし、どうしますか?」
梨奈はあえて山木に尋ねた。
マンガによくあるように、自分の額の血管がひくひく動いているのではないかと思われた。
もう施術はやめると言われれば、それもやむを得ないと思った。
効果がないのに、高い料金をもらうわけにはいかない。
二回目以降は、初回に比べれば、料金はぐっと安くなる。
それでも何千円という出費になる。
「すみません。僕がいけなかったんです。せっかくきりっとした顔にしてもらったのに、僕がいい加減だったせいで。今度はきちんと手入れしますから、もう一度お願いできませんか? やっぱり友達やガソリンスタンドの同僚たちから、眉なし男といわれるの、いやですから」
山木は頭を下げた。
「本当に今度はきちんとケアしてもらえますか?」
「はい、約束します。タオルや手でこすったり、皮をむいたりは絶対しません」
「わかりました。
この前入れたカラーはけっこう抜けてしまったので、今日は濃いめに施術します。
今度はきちんと手入れしていただけますね。
約束ですよ」
梨奈は気持ちを切り替えて、かんで含めるように山木に言った。
これでは子どもと一緒だ。
それでも梨奈は施術を始めたら、気持ちが落ち着いた。
山木さんは眉毛が薄いということで、大きなコンプレックスを持っている。
それは人生全体に対する自信喪失につながっている。
そんな山木さんが自信を持って生きていけるように、私が全力をあげて、りりしい眉にしてあげよう。
そう思うと、山木のことがとてもいとおしく思えてきた。
今回、山木はあまり動くこともせず、じっとしていた。
施術も前回に比べ、はかどった。
施術が終わり、梨奈はアイシングした。
「今回はきれいにできました。しっかりと処理しておきましたから、たぶん三回目の施術は不要だと思います。でも、この前のようにいい加減なケアをしていると、また色が抜けてしまいますよ。あまり肌にダメージを与えると、今度はきれいにカラーが入らなくなるかもしれませんし。
いいですか。きちんとケアをしてくださいね。その気になれば、誰でもできることですから」
アイマスクを外してから、梨奈は注意した。
前回はあまり説明を真剣に聞いていなかった山木だが、今度はしおらしく頷いた。
「先生、来年からタトゥーもやるんですね」
すべてが終了したとき、山木はファッションタトゥーのことを尋ねた。
「はい。もう準備も済み、来年、正月休みが終わったら、ボディーアート部門を開設します」
「僕、昔からずっとタトゥーに憧れていて、いつかやってみたいと思っていたんです。友達も何人かやっています。ぜひとも先生のようなすてきな女性にやってもらいたいな。今から予約、できますか?」
思いもかけず、山木はファッションタトゥーの予約を希望した。
それで、施術のためのカウンセリングを行った。
ボディーアート部門がオープンしたら、真っ先にやってもらいたいと、七海と淑乃、直美がすでに予約を入れている。
三人は新年最初の営業日である、一月六日に施術することになっている。
七海が最初の客で、次いで淑乃、直美の順だ。
淑乃と直美が、梨奈の第一番の客としての名誉を、梨奈と付き合いが長い七海に譲ったのだった。
沙織は今、ジュンに背中に天女を彫ってもらっている。
梨奈の鳳凰を見て、自分も背中をジュンの絵で飾りたくなったのだ。
あと少しで完成する。
新しくボディーアート部門を立ち上げる、という珍しさも手伝ったのか、土日にはファッションタトゥーやボディーペインティングの予約が、予想以上に入っていた。
一月中はキャンペーンでボディーアートの料金を“20%OFF”にしている。
梨奈は山木に、一度タトゥーを入れると、もう消せないことや、社会的な不利益を受けることが多いことなど、デメリットを十分に説明した。
また、梨奈はアレルギーの有無や体調など、他の必要事項なども尋ねた。
カウンセリングをした上で、山木は大丈夫だと言い切った。
山木のガソリンスタンドは土日も営業で、休暇はローテーションを組んで取る。
山木は手帳を見ながら、休みになる三週間後の金曜日を希望した。
梨奈はタトゥーの見本帳を山木に見せた。
アメリカから取り寄せたフラッシュを参考にしながらも、梨奈自身が描き下ろしたものだ。
もちろんアメリカのフラッシュも、見本として使う。
そのフラッシュは正規に購入したものなので、タトゥーの図柄として使用する権利があった。
また、フラッシュにはない、オリジナルの図柄も引き受ける。
山木は多くの絵柄見本の中から、背中に赤い鯉のタトゥーがある、裸の女性の絵を選んだ。
下半身を青い布で隠している。
「僕、こういう色っぽい女性の絵を入れたかったんです。この人のお尻、すごくセクシーですね」
「もし、見本の絵から変更したいところがあれば申し出てくださいね。背中のタトゥーの図柄を変えるとか、ポーズを変更するとか、注文に合わせて描き直します」
「いえ、この絵、僕好みですから、このままでいいです」
山木はあまり自己主張がない。
そのくせ、妙なところで意固地になる。
入れる部位は、左腕上腕部だ。
大きさは縦15センチぐらい。
肩から肘の近くまで、けっこう大きな絵になる。
施術には三時間ほどかかり、料金は税込み52,500円のところを、一月中は二割引で42,000円ですと梨奈は山木に告げた。
「はい。それでいいです。憧れのタトゥーなので、多少高くても、きちんとしたところでやりたいですから。ここなら衛生管理もしっかりしているし。それに美人の先生にやってもらえるし」
「いくらうちが衛生管理をしっかりしていても、お客様がいい加減なケアをしていれば、ばい菌が入って化膿することもあり得ますからね。今度はしっかりケアしてくださいね」
梨奈は山木にそう言ってやった。
山木は正式にファッションタトゥーの予約をした。
今日施術した眉へのアートメイクもそのときに見せてもらい、もう一度施術をするべきかどうかを決めることとなった。
■第5話 海辺のバーベキュー 2013年04月05日(金)10時00分
■第4話 背を舞う鳳凰 2013年03月29日(金)10時00分
■第3話 彫師デビュー 2013年03月14日(金)10時00分
■第2話 チャレンジ 2013年03月05日(金)10時00分
■第1話 タトゥーとの出会い 2013年03月01日(金)10時00分
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