TATTOO COLUMN
「RAPPER」という生き方がある。
彼らのREALとは個性であり、それが曲の善し悪しを大きく左右するという。
各々が独自の切り口で、生まれ育った環境やライフスタイル、己の内面、敵対するものへの批判、そうしたもの全てを醸し出しながら韻を踏み、作品を唯一無二の存在にするべくオリジナリティーを競い合う。
彼らがビートに乗せて吐き出す言葉には、時に傲慢とも思えるメッセージが込められている。
同様に、彼らの体に刻まれたタトゥーも、彼らの自己表現の大切なファクターであると感じる。
ここ日本にも、米国のSTREETから生まれた、そのHIPHOPという音楽に魅了され、時に道を踏み外し血を流しながらも、言葉を吐く事を止められなかった一人の「RAPPER」がいる。
1982年生まれ、最後の大物。元ICE DYNASTYのBOSS。
詳細は伏せることとなるが、ICE DYNASTYとしてシーンを若手代表として牽引し、その将来を嘱望されながらも、訳あって戦線離脱。
その後はこの国の底辺と表現するしかないような環境で、約四年の潜伏生活を送る。
2013年、2月某日。
姿を消す前に主戦場にしていた街 -渋谷-
4年ぶりに不敵な笑みを湛え、彼はそのSTREETに降り立った。
身体中に刻まれた大小様々なTATTOOはまるで産まれた時から
そこに存在するかの様に強烈な生活臭を漂わせている。
自身の「TATTOO LIFE」と「沈黙の4年間」について、今その重い口を開く。
■まずはアルバムリリースおめでとうございます。本日は宜しくお願いします。
KNZZ(以下K):ありがとうございます。宜しくお願いします。
■早速ですが、まずは音楽関係の質問から
ICE DYNASTYからはどうして離脱してしまったのでしょうか?
K:う~ん…2007年にDYNASTYでアルバム制作してる途中だから、えっと…3枚目かな?
その少し前位から、それまで「何でも可能だぜ。俺に言えば。」とか、強がって虚勢を張っていた部分が崩れ出したっていうか。
出来なかった事の責任を出来そうな事で埋めようとするが失敗するっていうサイクルの自転車操業が止まれなくなってたんですよ。で、そのツケを払えなくて…って感じですかね。
まああんまりカッコイイ話じゃないんだけど(笑)
MIX CD「ENKO FLY」~vo.1~の「NO MONEY」って曲聴けば大体分かりますよ。
■何か葛藤みたいなものとかはなかったんですか?積み上げたキャリアがゼロに 戻りかねない訳ですよね?
K:いや、もう葛藤しかなかったっすよ、ホント。
正直、アルバム制作中は「このアルバムを売って…」っていうのをモチベーションにしてたんですけど、発売から3ヶ月後の初回決算日まで持ちませんでした。
小さな安請け合いから始まって…何やってんだ畜生!って後悔して。結局飛んじゃった。
涙を流した事もあったし、その後の前向きになる一瞬を逃さずRAPしてみても、結局虚しさだけが残らなかったね。
それまでした事がない反省って意味を噛み締めながら、アスベスト除去やらされて…地獄の日々でした。
まあ俺のガラとった方にも言い分はあるし、全部自分が蒔いた種なので、因果応報ってやつです。
■でも当時は相当なインパクトがありました。手の甲までビッシリ刺青のニューカマー(笑)
今はわりとそういうラッパーも増えてきていますよね。
K:まぁ、簡単に言えば調子に乗ってたんですよ(笑)
音楽氷河期のこの時代を担う、若い世代のラッパーには 、「同じ場所にタトゥーを入れても、同じ失敗はするな!」と声を大にして言いたいですね(笑)
■KNZZさんがタトゥーを入れ始めたのって?
K:う~んと、中学卒業して、年少入る前だから…16,7位?の時にこの和彫りからっすね。
地元で普通のタトゥースタジオですよ。
あぁ…その時は間違えて兄貴の身分証持ってっちゃったんすよ。
・・・・・はいすいません。
18歳以下がダメなのは知ってました(笑)やっぱじゃあ18歳から入れ始めたって事で(笑)
■そこからどんどん増えていく訳ですよね。どういう時に増やしていったんですか?
K:まず最初彫ってくれてた先生が途中で死んじゃったんすよ。予約日にスタジオ行ったらそこの若い奴が青アザだらけで引っ越しの準備してて、「すいません。俺ら出来なくなっちゃったんですよね…」って言われて。
その後何軒か他をあたったんすけど、何故かその続きをやってくれる所がなかったんですよ。
で、どうしようもねぇなって思ってた頃、HIPHOPにハマって向こう(アメリカのゲトー)みたいに思いつくままワンポイントずつ色々な場所で彫って貰う様になりましたね。
■KNZZさんの中で、思い入れのあるタトゥーを挙げるとしたらどれになりますか?
理由も合わせて伺いたいです。
K:ご当地タトゥーなんすけど、当時D.O君(練馬ザファッカー)が、福島でタトゥーイベントのLIVEに出て、「暇なら来なよ。」って言われたんで後輩と葉巻買うついでに行ったんですよ。
そしたらその日がたまたま自分の誕生日と重なってて、D.O君に「好きなの入れなよ。奢ってやるよ。」って言われて「よっしゃぁ!何入れよう?」と。
で、福島で”TOKYO”って彫ったってゆう(笑)
■TATTOOとHIPHOPって、海外だと当然のように紐付いていますよね?
そのあたりについて何か思う所はありますか?
K:どちらも生き様っていうかライフスタイルと密接に結びついている文化であって、コンセプト的に自分に忠実、リアルというのが大前提だという事。
日記ですよね。両方。やり方が違うだけで。
TATTOOの場合、リリックを具体化させ絵にして自分の肌に入れる。
HIPHOPの場合、そのまま文字を吐き出し音と共に録りCDにしたりする。
で、同一ジャンルの中でも「個性」を表すスタイルは更に細分化されてて、例えば俺のTATTOOの様にノリとパッションで入れる場所、絵柄などを決め、1~2ポイントずつ躊躇なく彫って完成させていくスタイルもあれば、場所や絵柄などを熟考し、全体の完成図を把握した上で時間をかけて、じっくりと仕上げるスタイルもある。
これはHIPHOPも同じなんすけど、最近の日本のRAPは「伝え方」の手法がどれも似ちゃってて…
なんか薄っぺらな感じがしちゃいます。
■あとこれも聞いてみたかったんですが、現在HIPHOPのシーンと薬物の結びつきが顕著だとか言われているじゃないですか?当局によるクラブなんかの立ち入りも増えていますよね?
いろいろ見てきた立場としてはどう思われます?
K:最近特に満たされてる人間がハマってるケースが多いと思う。
そういう奴が「カッコつける道具」としてドラッグを「見せてる」。
当然TPOをわきまえないし、それを見たまだクリーンな子は「大丈夫そうだな」って真似をする。
ハッキリ言って勘違いもいいとこだね。
元々ハスラー気質で、ラッパーの俺から言わせれば、それってファッションじゃないし、自分がダメな言い訳にすんなって思います。
■いわゆる大麻は、カルチャーとしてこの手の音楽の根底にあって、日本人もそれをトレースしたくて、、 というような感覚なのかもしれませんが、それがハードドラッグの呼び水になっているという事はありませんか?
K:それは間違いないっすね。オペレーションだと思います。
なんでオランダが大麻を解禁したのか?とか、パブロ・エスコバルがコカインをいじってた目的はなんだったのか?とか。煙草もそう。
要は、その余波を分かってて落とし込んでいく。
ヤツらにとってそれは仕事だから。日本人は決められた流れに従っちゃってる。
HIPHOP感も同じで俺もRAPするのが当たり前で、ドラッグ売ったりやったりするのが生活の一部だっていうアメリカの音楽を、場所が違うのに勘違いして聴いてたけど、今思うのは「アメリカではこうやってるから日本でもこうやろうよ」みたいなその先入観から抜け出した方がいいと。
逆に俺はその先入観をアメリカ人に喰らわしたい。
「日本人ってサムライじゃん。」「サムライがPAPしてるよ!」みたいな。
そういう表現が出来て、アメリカ人喰らわせられる様になった時に、初めて日本のHIPHOPもカルチャーって言われるんじゃないかなって思います。
■実際あいつはもろジャンキーみたいなラッパーって多いですか?
K:誰が見ても分かる様なタイプは置いといて、やっぱり中毒性の高い音楽を表現できるアーティストは、天然でジャンキーの様な人間が多いですよ。俺も完全に音楽に依存してるし。
■結局、そこにクスリがあって、それを取り巻く全てを包括して見てしまうと、 やはり全てのイメージが悪くなってしまうんですよね。
カッコイイタトゥー、カッコイイ音楽があっても、そこにドラッグの臭いがあると、その派生物のようにも思われかねないというか。 その辺りの事について何かご意見はありますか?
K:やってるやってないとか、ドラッグを肯定する否定するとかそういう問題じゃなくて、それがないと音楽出来なかったりとか、その為にやってる奴等は偽物だと思う。
俺はやってる音楽の外側にあるモノだと思ってるし、俺自身、ドラッグを一番否定してる。
最後まで一緒にいれるモノではないし。
それこそ正に「アメリカと同じ」って勘違いが生まれた状態で、もっと若い奴が聴いた時に、更に悲劇が起きてしまうと思う。
■やっぱりこのあたりの話はKNZZさんに聞かない方がいいですね(笑)
では話は振り出しに戻りますが、今回のアルバム-Notorious is back-についてご紹介下さい。
K:影とかHinomaruには4年ぶりって言ってたけど、よく数えたら6年ぶりにちゃんと出します(笑)
6年前の俺ってホントにダメで、色々な人に迷惑かけて、潜伏中は死亡説が流れる始末でした。
潜伏直前「何もなかった事にしてやろうかな?」って思った事もあったけど、それじゃここに戻って来れないし、全て曲にするしかないっていう考えにシフトしていったんだ。
結局俺にはこれしかないって事に、タコ部屋の中に押し込まれて体悪くしながらやっと気付けた。
悲劇を通り越して、喜劇だよね(笑)
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■最後に今後の活動についても聞かせて下さい。
K:そうだね。ぼちぼちギアを上げてくつもり。
TwitterやらFacebookやらの流行りものは大体手付けてみてるから、そのあたりでチェックしてください。
KNZZ(info) Twitter
https://twitter.com/Notorious_KNZZ
KNZZ FACE BOOKページ
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