TATTOO COLUMN

マルケサス諸島のトライバルタトゥーのデザインはマケージャスタイルと呼ばれ、部族ごとに決められたモチーフを持つ総身彫りだが、黒の面積が大きい直線的なパターンが特徴的です。

サモア、トンガから始まりポリネシア全域へと広がって行き数千年にもわたって進化を続けていったトライバルタトゥーの文化は西暦200年頃にマルケサス諸島に至り大航海時代後のヨーロッパ人による入植にともなう終焉までの1000年以上の期間にさらなる発展を独自に遂げ、ポリネシア芸術としてその輝かしい一つの頂点といえる隆盛期を迎えたと言えると思います。
ほとんどの者が全身を覆うというところまで進んだタトゥーの面積が物語る文化としての大きさ、あらゆる制約から自由になったかのような豊富かつ複雑なトライバルデザインのバリエーション、そしてそれらの表現をすべて可能にした精巧な技術の熟成。



これほどまでの文化にもかかわらず、多くの研究者が資料を残せるぐらいの時代までキリスト教宣教師の布教活動に抗いながらも細々とタトゥーが存在していた他の島々と比べて、非常にあっさりと途絶えたような印象があるのですが、そのことをマケージャトライバルデザインの、日常生活に関わるありとあらゆる物をデザイン化してしまうような奔放さと合わせて考えると、当時のマルケサスの人々にとってのタトゥーとは因習的な重い要素からはすでに解き放たれ、最もカッコいいファッションというぐらいの領域にまで一般化していたがために、流行したものほど跡形もなく消えてしまうというポップカルチャーのように、西洋文化という新しいファッションにいとも簡単に取って替わられたという側面があったのではないだろうかなどと感じます。

引用著書:「traibal tattoo designs from the americas 」出版:mundurucu publishers
著書:「traibal tattoo design」出版:the pepin press
著書: 吉岡郁夫「いれずみ(文身)の人類学」出版:雄山閣

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Posted at 2011年02月18日 16時47分