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刺青師牡丹-第13話 忠告

第13話 忠告 ▼
前回までのあらすじ----------
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梨奈は早速バイクギャングロッカーズの仲間たちに、彫光喜との仲を師匠に認めてもらえたことを、メールした。

みんながおめでとうと返信してくれた。

近いうちにシンも呼んで、めしでも食おうぜ、と政夫が提案した。

道場が休みの日に、梨奈は両親が住む実家に行って、すべてを打ち明け、彫光喜こと伸吾を紹介した。

伸吾のアパートがある大曽根と、梨奈の実家がある矢田は、距離的には近い。

名鉄瀬戸線、地下鉄名城線で一駅だ。

梨奈は彫り師としてある程度の収入を得られるようになった。

入れ墨もかなり大きくなり、これから暑い季節になれば、腕の牡丹などが見つかってしまう可能性が高い。

隠し通すことができないのなら、いっそ打ち明けてしまおう。

伸吾との交際を師匠に認めてもらえた。

だから堂々と両親に伸吾を紹介できる。

事前に、今度の木曜日に、今付き合っている男性を家に連れて行く、と連絡すると、父親が大いに期待した。
 
梨奈はその日の夜、伸吾を伴い、実家に帰った。

伸吾は紺のスーツを着用した。

伸吾のスーツ姿は梨奈も初めてだった。

母親は腕によりをかけ、手作りの料理で伸吾をもてなした。

父親はその日、夜7時前には家に帰ってきた。

今は残業することはほとんどない。

かつての企業戦士も、不況で閑職に追いやられている。

まずはビールで乾杯をした。

父親が伸吾のコップにビールを注いだ。

父親は頭を短く刈り込んだ、伸吾の爽やかな外見に好意的だった。

「小野田伸吾君だね。梨奈の父親の誠です。今後ともよろしく」

しばらく父親と伸吾は料理をつまみながら歓談した。

「ところで、伸吾君はどういうお仕事をしているのだね? 梨奈からは芸術関係と聞いていますが」

梨奈はついに来たと思った。

いよいよ話すべきときが。

「実は私……」

伸吾に代わって、まず梨奈が口を開いた。

「今、伸吾さんと一緒に、彫り師をやっているの」


梨奈はピオニーでアートメイクをしているんじゃないのか?」

彫り師という言葉に、父親は疑問を抱いた。

「今まで隠していてごめんなさい。私、ピオニーでちょっとトラブルがあって、辞めちゃったの。それで今、彫り師、入れ墨を彫る仕事をしてるんです。アートメイクも入れ墨も、基本的には皮膚に色素を埋め込むという作業は同じだから」

父親はいれずみという言葉にびっくりした。

母親は背中に大きく鳳凰を彫っていることを知っているとはいえ、梨奈の言葉が信じられなかった。

梨奈は長袖の服を肘の上までまくり上げ、左腕の彫り物を見せた。

父親は娘の腕の黒い闇に浮かぶ、色とりどりの牡丹や蝶を見て、仰天した。

「梨奈、おまえ、腕までいれずみしちゃったの? そして今、人にいれずみを彫っているの?」

母親が梨奈に尋ねた。

「はい。ピオニーでちょっとお客さんとトラブって、辞めざるを得なくなっちゃったの。それで、仕事を探さなくちゃ、と思って今勤めている入れ墨道場に入ったんです。伸吾さんはそこの兄弟子なの」

「なんでピオニー辞めたこと、言ってくれなかったの? いれずみの店なんかに勤めなくても、じっくり就職口を探せばよかったのに。そこで腕まで彫っちゃったの?」

母親が梨奈を難詰した。

母娘のやりとりを聞いていて、父親は妻が梨奈のタトゥーのことをすでに知っていたことを悟った。

「静子、おまえ、ひょっとして梨奈がいれずみをしていたことを知っていて、俺に黙っていたのか? 梨奈がアパートに移ると言い出したとき、賛成したのは、俺に梨奈のいれずみを知られないようにするためだったのか」

父親は梨奈の告白に激怒したが、妻も娘のいれずみに気づいていながら、自分だけ蚊帳の外に置かれたことも気に障った。

明るく素直な、いい娘だと思っていた梨奈が、全身にいれずみをしており、さらに刺青師をやっている、という事実に大きな衝撃を受けた。

「伸吾君、せっかく来てくれたのに申し訳ないが、今日のところは帰ってくれないか。今日はちょっと君と話をする気にはなれない」

父親は丁重に伸吾に言った。

表面上は穏やかだったが、内心ははらわたが煮えくりかえっていた。

「はい。わかりました。今日はおいとまします」

伸吾は従順に応えた。

「それから梨奈、おまえはもう二度と帰ってくるな。いれずみをするようなやつは、速水家の娘ではない。親子の縁を切る」

父親は梨奈に冷たく言った。

「お父さん、そこまで言わなくても。親子の縁を切るなんて。梨奈は紛れもなく私がおなかを痛めて産んだ、あなたと私の子なのですよ」

母親は父親にすがって哀願した。

「おまえは黙っていろ。とにかく、いれずみをきれいに消さない限り、もうこの家の敷居をまたぐことは許さん!!」

父親は梨奈を家からたたき出すように追い返した。

伸吾のアパートで、梨奈は泣きじゃくった。

梨奈には優しい父親が、あそこまで激怒するとは思わなかった。

いれずみをきれいに消さない限り、家に入れないと言っていたが、全身に彫ったいれずみを消せるはずがない。

「そのうち両親もわかってくれるよ。今日は突然、彫り師をやっているなんて言っちゃったんで、お父さんも戸惑ったんだろうけど、きっと許してくれるさ」

伸吾は梨奈を慰めた。

一週間後、父親より電話があり、すべてを許すと言ってくれたときは、梨奈は嬉しかった。

「もういれずみは消せないのだから、梨奈が信じる道を進みなさい。ただし、決して間違った方向には行かないこと。そして、自分が選んだ道だから、後悔しないこと。言いたいのはそれだけだ。伸吾君と仲良くやれよ。また二人そろって、うちに来なさい」

父親は優しく言ってくれた。

伸吾との交際も認めてくれた。

お父さんもこの一週間、お母さんと話し合い、さんざん悩み抜いたのだろうな、と梨奈は想像した。

伸吾の母親は梨奈のことを気に入ってくれた。

伸吾は中学生のとき、父親を交通事故で亡くし、母親の手で育てられていた。

息子が彫り師をやっていることを知っているので、伸吾の母親は梨奈の全身の入れ墨を受け入れてくれた。

伸吾には兄が一人いるが、家を離れ、横浜で叔父が経営している会社に勤めている。

その後、梨奈は彫り師として順風満帆に行っているように思えた。

ある日、梨奈はコージから、時間があるときにスタジオに寄ってほしいと連絡を受けた。

どんな用だろうかと気になった。

フェニックスタトゥーにはお世話になっているので、むげに断るわけにはいかない。

道場が休みの木曜日に行きますと返事をしておいた。

コージはスタジオをオープンする前の、朝10時に来てほしいと要請した。

「お休みのところ、わざわざ足を運んでもらってすみません」

コージはまず梨奈にお詫びをした。

フェニックスの人たちに会うのは、久しぶりだ。

梅雨の時季で、その日はあいにくの雨だった。

「こちらは僕の師にあたる彫浪師匠です」

コージは師匠を梨奈に紹介した。

彫浪は50歳を過ぎた、威厳がある人だった。

彫浪一門といえば、東海地区では圧倒的な存在感がある大御所だ。

体躯は大きいが軽い感じの彫甲とは貫禄が違う。

その後ろで、ジュンとリョーコがしおらしく椅子にかけている。

「今日は突然お呼び立てして、すみませんな。わしがコージの師の彫浪です。ジュン、リョーコは孫弟子になります。タトゥー大会でお目にかかったことがありますね。今日は速水さんに少しお伺いしたいことがあって、お手数ですがご足労をお願いしました」

彫浪は自分の年齢の半分にも満たない梨奈に、丁寧な物腰で話した。

彫浪は梨奈のことを、姓で

「速水さん」

と呼んだ。

「速水梨奈です。フェニックスの方には、お世話になっています」

梨奈は彫浪に対し、最初は威圧感を抱いた。

彫浪には大名古屋タトゥー大会で二度会っているのだが、話をすることは初めてだった。

しかし思ったより温厚な感じなので、少しほっとした。

「今日来てもらったのは、実は彫甲さんのことです。コージから、速水さんが彫甲さんのところにいると聞き、ちょっとお話を聞かせてもらいたいと思いましてな。こんな話はそんじょそこらの人にはできることではないが、コージもジュンも、速水さんなら信頼できるからと推薦してもらい、会うことにしました」

彫浪は梨奈の師匠ということで、彫甲にはさん付けした。

梨奈はなにやら大変な話になりそうだと覚悟した。

「わしは彫甲さんの師匠に当たる彫筑とは親しくしていましてな。彫甲さんが名古屋に来たとき、彫筑には型破りな男がそちらに行くからよろしく、と頼まれたものだ」

彫浪はまず彫甲との出会いから話をした。

彫甲は四年ほど前に、八事に道場を開いた。

彫筑から言付かっていたのか、道場を開設してしばらくしてから、彫甲は弟子の彫青龍を連れ、彫浪のところに挨拶に来た。

そのときは彫甲も殊勝に振る舞った。

当時は髪がそれほど長くなく、髭も口ひげだけだった。

彫浪はなかなか礼儀正しいやつだと感心した。

彫筑は型破りな男と言ったが、礼儀正しいし、まともな男ではないか、というのが第一印象だった。

元力士というだけあって、身体の大きさには圧倒された。

しかし彫甲が挨拶に来たのは、そのときだけだった。

そしてだんだんその地金を現してきた。

彫筑の弟子としては最高の腕を持つ彫甲は、宣伝上手、商売上手なことも合わせ、名古屋でめきめきと頭角を現した。

福岡でやくざの用心棒をしていた頃に所属していた組と同系列の、秋吉組に巧みに取り入り、その組員を顧客にした。

また、名古屋場所が開催されたときひいきしてくれた、中京仁勇会の幹部にも接触した。

リーマンショック以降の不況で、他のタトゥースタジオでは客足が激減したが、彫甲は暴力団関係の客を受け入れ、客の減少を防いだ。

ただし、暴力団関係者に彫るのは、彫甲と彫青龍だけで、他の三人には手を出させない。

彫大海、彫光喜、梨奈は、店先に“暴力団関係者お断り”と張り出してあるにもかかわらず、受け入れていることに疑問を感じている。

もし暴力団員も受け入れるなら、“暴力団関係者お断り”と虚偽の看板は掲げないほうがいい。

しかし師匠には文句が言えなかった。

最近は応接室を改装して、彫甲、彫青龍の専用として、別のブースを作り、そこで暴力団関係者に施術している。

だから一般客とは接触しないようになっている。

彫光喜や梨奈が客に彫るようになり、ブースを増やす必要があるからでもあった。

「彫甲さんは腕も確かだし、商売もうまい。 ただ、最近の彫甲さんには、ちょっと目に余るものがありましてな。 ほかの彫り師さんやお客さんから、苦情が出ているんですよ。 特に他の流派のことを、落書きだとかへたくそだとか、あちこちで言いまくることはやめたほうがいい。 少なくとも、お客さんには言ってはいけない。 それを聞かされたお客さんが、また他の人にしゃべりますからな。 彫り師の中には、気が短い者もいるので、そのうち衝突になるかもしれません。 実際彫島さんの一門がかなり頭にきているけど、わしの知り合いの弟子だから、大目にみてやってくれとなだめています」

梨奈には彫浪が言わんとしていることが、少しわかってきた。

確かに彫甲は他の彫り師やタトゥーアーティストのことをぼろかすにけなしている。

梨奈もジュンやフェニックスタトゥーのことを馬鹿にされ、何度も悔しい思いをしている。

しかし、そのことが他の彫り師をそんなに怒らせているとは思わなかった。

彫浪は続けた。

「それから、ちょっと聞いた話ですが、彫甲さんは衛生に関し、気配りが足りないようですね。

彫甲さんで彫ってもらったお客さんが、100円ショップで売っているような安っぽいケースから針を取り出し、そのままマシンにつけて使っているので、きちんと滅菌、消毒をしてあるのか不安だと言っているのを聞いたことがあります。

その点はどうですか? 彫甲さんの近くにいる速水さんに、ちょっとお訊きしたいのですが」

「いえ、うちの道場にはオートクレーブもありますし、それは大丈夫だと思います。私も兄弟子も、彫る前には必ずオートクレーブにかけて滅菌しています。最近は滅菌パックに入れて保管をしています」

梨奈は即座に答えた。

梨奈も彫光喜も彫大海も、始業前に、その日に使う予定の針やチューブなどを、少し余分に滅菌パックに入れ、オートクレーブにかける。

そして客の目の前で滅菌パックを開封する。

しかしそういえば、最近師匠と彫青龍がオートクレーブを使っているところを見ていないということに思い当たった。

梨奈が彫ってもらったときでも、彫甲が安物のプラスチックケースから針を取り出しており、ちょっと不安を覚えたことがある。

それでも、きちんと滅菌した上で、ケースに保管してあるのだろうな、とあえて考えていた。

彫光喜は以前、

「師匠や青龍さんたちは、毎朝その日に使う予定の針やチューブは、薄めたヒビテン液や塩化ベンザルコニウム液に浸しておくそうですよ」

と言っていた。

だから梨奈は、その日に使う予定の針やチューブなどは、朝のうちに滅菌を済ませていると思っていた。

とはいえ、梨奈が彫甲入れ墨道場に来てからもう半年になる。

その間、師匠も彫青龍も、オートクレーブを使っている場面を見た記憶がない、というのはおかしかった。

今初めてそのことに気がついた。

滅菌をするのは当然のことなので、師匠や彫青龍はオートクレーブで滅菌をしていると思い込んでいた。

大海さんは道場に住み込んでいて、事情に詳しいだろうから、一度確認してみようと思った。

大丈夫だと言ったはずなのに戸惑っている梨奈を見て、彫浪はひょっとしたら、といぶかしんだ。

「衛生のことは、我々彫り師にとっては非常に大事なことですからな。 20年前には衛生管理がけっこういい加減な彫り師もいましたけどね。 万一お客さんが肝炎などに感染したら、ことは業界全体に波及しますから。 彫り物が原因で化膿するだけでもイメージダウンにつながります。 もっとも化膿はお客さんのアフターケアがいい加減だったりすることが多いですが」

化膿については、梨奈もいやな思い出がある。

「それ以外にも、小さなものを目立たないように彫りたかったというお客さんに、強引に大きなものを彫らせたという話も聞いています。 断ろうにも、あの相撲取りのような巨体で迫られ、断り切れずに大きなものを彫ってしまい、後悔したという話です」

確かに彫甲や彫青龍にはけっこう強引なところがある。

特に彫甲は口がうまいので、客はつい大きなものを彫ってみようというという気にさせられてしまうことが多い。

そのことで、彫青龍と梨奈や彫光喜が対立したことが何度もある。

「これはちょっと言い過ぎましたかな。 彫甲一門である梨奈さんには、ちょっといやな話だったかもしれませんね。 だが、わしは他流派の嫌がらせでこんなことを言ったのではなく、このままでは彫甲さんがまずいことになるのではないか、と心配になりましてね。 彫甲さんは一門を率いる総帥としては、まだ若い。 自分の流派を盛り上げようと、ついつい勢いづいて、やり過ぎてしまうこともあるだろう。 しかし、この業界は中にはそれをおもしろく思っていない勢力だってある。 それに、わしは彫甲さんの師匠に当たる彫筑とは、けっこうよしみがありましてね。 彫甲さんが名古屋に出てきたときには、彫筑からも暴走しないように見守ってやってほしいと頼まれましたからな。 弟子のあんたにこんなことを言うのも何だが、彫甲さんは向こうでちょっと不始末をしでかして、 福岡にいられなくなったので名古屋に来たそうだ。 こちらでまたおかしなことにならなければ、と彫筑も心配していましてね」

不始末というのは、ひょっとしたら女性関係かしらと、梨奈は考えた。

「はい。だいたいの事情は飲み込めました。 考えてみれば、私にも思い当たることがあります。 確かに師匠はうまいこと口説いて、お客さんに強引に彫ってしまうことはあります。 でも、私は彫甲では最も下っ端です。 こんな私に、何ができるでしょうか?」

「難しいことを言ってすまなかったな。速水さんは何もしなくてよろしい。 ただ、彫甲さんに何かよくない兆候があったら、わしにちょっと知らせてもらえないだろうか。 他流派の総帥であるわしでは言いにくいのなら、フェニックスのコージやジュンでもよい。 スパイみたいなことを頼むのは心苦しいが、これは彫甲さんのためでもある。 少し前に九州でイベントがあり、わしも参加したのだが、そのとき彫筑とちょっと話をしましてね。 彫筑にも噂は流れていて、心配しとったんだよ。 これは彫甲さんの師匠である彫筑の頼みでもあるのだ。 今の彫甲さんを正せるのは、彫筑しかいない。 そのためにも、彫筑には真実を伝えなければならない。 決してわるいようにはしない。わしを信じてほしい」

彫浪は梨奈に丁重に詫び、そして頼んだ。

東海の大御所と言われる一門の総帥が、駆け出しの彫り師梨奈に頭を下げたのだ。

梨奈は彫甲の女性関係の派手さなど、思い当たることがたくさんあるだけに、師匠のことが心配になった。

はちゃめちゃ師匠でも、やはり梨奈にとっては大切な人だ。

それに万一師匠に何かあって、奥さんを悲しませることがあってはならない。

決して師匠を自滅させてはならないと思った。

「わかりました。私はコージさんやジュンさんには、とてもお世話になっています。 今は彫甲でやってはいますが、コージさん、ジュンさんがいなければ、今の私はありませんでした。 彫浪師匠を信頼して協力させていただきます。 もし何か不穏な動きがあれば、コージさんかジュンさんに報告します」

梨奈は彫浪に約束をした。

彫浪と約束したものの、梨奈が一人で背負い込むのは、荷が重かった。

梨奈は最も信頼している彫光喜に相談した。

「そうか。 梨奈、彫浪さんとそんな重い約束をしたのか。 でも、確かにそうだよね。 今の師匠、ちょっとまずい方向に進んでいるような気がする。 あんな師匠でも、俺たちにとっては大事な師匠だ。 それに何か起こって、奥さんを悲しませたくないしな」

衛生面では、彫光喜も、師匠や彫青龍がオートクレーブを使っているところをあまり見たことがないことに思い当たった。

オートクレーブを使って滅菌することは当然のことなので、今まで師匠や彫青龍はオートクレーブで滅菌していると考えていた。

師匠や青龍の客に対しての強引さも、気になるところだった。

二人は暴力団関係者にも彫っている。

暴力団関係者も最近は金回りがよくないことも多い。

若い末端組員は、特に厳しいようだ。

暴力団関係者も、なかなか大きな絵を彫ろうとしない。

そのとき彫甲は、

「やくざはきっぷが大事ですよ。 たとえ見栄でも、大きなものを背負わなくちゃ、軽く見られますからね。 料金を安くしてあげますから、でっかく彫りましょうよ」

などとおだて上げ、大きな彫り物を背負わせる。

一般の客にも同じように口八丁手八丁で、ついついその気にさせてしまう。

彫ってしまったあとで、もっと小さな絵にしておけばよかったと後悔する客も多い。

しかし背中一面に彫ってしまった入れ墨は、もう消すことができない。

それで人生を狂わせてしまった客もいる。

苦情を言おうにも、

「同意書に署名した以上は、お客さんの責任だ」

と取り合わない。

また、彫ってしまったあとで文句を言っても、どうしようもない。

派手な女性関係も今後問題になるかもしれない。

武甲山の二人のウエイトレスのことも、彫光喜は美好に聞いて初めて知った。

男の目から見ると、師匠はあまりぱっとしない中年男にしか見えない。

しかしベッドを共にした女性から見れば、セクシーな魅力があるのかもしれないと彫光喜は考えた。

もちろん彫り師としての技術は超一流で、彫光喜は一目も二目も置いている。

榊原温泉での行為は、普通なら奥さんは離婚を申し出てもいいほどのものだ。

それでも美好は詫びを入れた彫甲を許してしまった。

やはり夜の生活で、女性をすっかり虜にしてしまう魅力が彫甲にあるのだろうか。

だが今後また女性をたぶらかし、入れ墨を彫ったりすれば、大問題に発展しないとも限らない。

梨奈一人で背負い込まなくても、師匠の問題では彫光喜も協力することを約束した。

「それにしても彫浪さんとはすごい人から頼まれたものだね。 彫浪さんといったら名古屋の重鎮として、圧倒的なネームバリューがある人じゃない。 彫筑師匠の友人なんだね」

「ええ。 師匠の師匠からの頼み、というんだから、断り切れなかったわ。 それにやっぱり師匠のことも少しは心配になるから。 私は彫浪一門のコージさんやジュンさんにもお世話になってるし。 今の師匠に弟子入りする前は、ジュンさんが実質私の師だったんだから」

それからしばらくしてからのことだった。

針作りは梨奈と彫光喜の仕事で、彫甲刺青道場で使う針は二人が作っていた。

その日は2時間ほど空き時間があったので、彫甲が、7本と11本のマグナム針の作製を梨奈に依頼した。

今その2種類を切らしているという。

「おう、できたか?」

彫甲が二階に催促に来た。

梨奈はちょうど作業が終わったところだった。

「はい、できています。

丸や平も何種類か作っておきました」

「サンキュー。 彫奈の針は作りが丁寧だから、安心して使うことができる。 では、さっそく使わせてもらうか」

彫甲は針をもらって、そのまま下に行こうとした。

「あ、すみません、師匠。 まだその針、オートクレーブにかけていないんです。 すぐ滅菌しますので、少しお待ちください。 終わったら仕事場にお持ちします」

梨奈は彫甲に少し待ってくれるよう頼んだ。

滅菌には20分ほどかかる。

次の客が来るまで、まだ余裕があるはずだ。

「フラックスなどは洗い流してあるんだろう?」

「はい。 塩素系の消毒液で洗浄をしてあります」

「それなら十分だ。 塩素系消毒薬で、HIVや肝炎のウイルスは死滅する。 あとは使うときに、アルコールをスプレーしておく」

「でも師匠、それじゃあちょっとまずいですよ。 やっぱりオートクレーブかけなくちゃ」

「大丈夫だ。 使い回した針ならまずいが、新品の針だから肝炎やHIVのウイルスがついているわけじゃない。 アルコールをかけておけば十分だ」

彫甲は結局そのまま仕事場に行ってしまった。

梨奈はこれはちょっとまずいのではないかと思った。

やはり針やチューブ、ノズルなど、直接肌や血液に触れるものは、きれいに洗浄して、オートクレーブで滅菌しておかなければならない。

それは基本中の基本だ。

確かに作ったばかりの未使用の針だから、肝炎やHIVウイルスが付着している恐れは低いだろう。

フラックスは有害なので、洗い流すために十分洗浄もしてある。

それでも万一のことがあるといけないので、必ずオートクレーブで滅菌するべきだ。

アルコールや塩素消毒剤だけでは完全な滅菌はできない。

まさかチューブ、ノズルは大丈夫だろうな? 梨奈は少し不安になった。

施術終了後、彫甲はチューブなどは塩素系消毒液を使って、洗浄している。

その後、ヒビテン液などに浸してはいる。

しかしオートクレーブにかけているかどうかはわからない。

ノズル、チューブの場合は、直接血液に触れているのだ。

オートクレーブで高温高圧滅菌しなければ、肝炎などのウイルスを滅菌することができない。

梨奈が自宅などで彫っていたときは、滅菌済みの使い捨てプラスチックチューブを使用していた。

使い捨てできない金属製チューブを使う場合は、よく洗浄した上で、30分以上圧力鍋で煮沸滅菌していた。

ピオニーで使っていたデジタルマシンは、滅菌済みの完全使い捨てカートリッジだ。

彫浪が危惧していたことが当たっているのかもしれない。

梨奈はどうしようかと思案に暮れた。

ここで意見しても、師匠が素直に聞き入れるとは思えない。

余計に意固地になってしまうだろう。

さっきも

「それじゃあちょっとまずいですよ」

と意見を具申したが、新品の針だか大丈夫だと一蹴されてしまった。

ここは彫光喜に相談してみようと考えた。

彫大海も相談に乗ってくれるだろうが、彫浪からの依頼については、しばらく内緒にしておいたほうがよさそうだ。

今後、師匠や彫青龍に渡す針は、あらかじめ滅菌パックに入れ、オートクレ-ブにかけておこうと梨奈は考えた。

だがチューブを滅菌しなければ、意味はない。

その後、梨奈に予約客が来た。

真理子だった。

背中に天女の絵だ。

真理子もとうとう背中に大きな天女を背負ってしまった。

梨奈とは十分話し合った末に、真理子は納得して背中に彫ったのだった。

梨奈自身も、背中に大きな図柄を彫りたくてたまらなかったので、真理子の気持ちはよく理解できた。

6月に実施した職場の健康診断は、何とか無事クリアできたので、あと1年は隠し続けたいという。

太股の鯉や牡丹なら隠せても、背中を隠しとおすのはむずかしい。

来年の健診はどうするのだろうかと、梨奈は少し心配になった。

胸部のX線撮影なら、やや厚手の、タトゥーが透けないティーシャツを着ていれば、ごまかせるかもしれない。

今日で三回目の施術だ。

ラインは完成し、今は色づけをしている。

真理子は周りを黒く染める額彫りではなく、白い肌に映える抜き彫りを希望した。

女性には抜き彫りのほうが似合うだろう。

完成まではまだ何度もかかりそうだ。

一回4時間の施術に真理子は耐えている。

彫甲の様式美を誇る和彫りの天女とは異なり、優美で繊細な、梨奈のオリジナルの天女だ。

彫甲はまた落書きを彫るのか、と言いたげだったが、客のニーズに応えるということで、異論は挟まなかった。

和彫りの彫り師というより、タトゥーアーティストとしての梨奈の才能を、彫甲も十分に認めていた。

真理子は背中の天女が完成すれば、しばらくタトゥーを増やさないつもりだが、やがては腕や胸にも入れたいと言っている。

真理子は入れ墨ではなく、タトゥーと表現したがっている。

真理子は地味だけれどもまじめなOLというイメージの女性だ。

今後、大きくタトゥーを入れてしまったことにより、人生がよからぬ方向に曲がってしまわないよう、梨奈は祈るばかりだ。

まあ、真理子自身、タトゥーに対してはしっかりした信念を持っているので、大丈夫かと思う。

梨奈は今、背中一面の客を、真理子以外にも三人抱えている。

腕の龍などを含めれば、継続して通ってくる客はかなり彫奈を指名している。

今や彫甲入れ墨道場では、彫甲に次ぐ稼ぎ手だ。

梨奈は午後4時より4時間ほど真理子に施術した。

片付けが終了し、道場を出たのは夜9時頃だった。

結局夕飯を食べそびれてしまった。

彫光喜も夜、客に彫っていて食事をしていないので、二人は武甲山に行った。

個室が空いていたので、若菜が梨奈と彫光喜を個室に案内してくれた。

二人はちゃんこ定食を注文した。

今回は水炊きにした。

だしがよくきいていて、ポン酢などで食べると旨い。

「今日は日曜日で忙しかった。 最近不況でタトゥースタジオは大変だというけど、うちはそこそこお客さんが来てくれて、ありがたいよ。 晩飯抜きというぐらいは、我慢しなければ」

「そうですね。 師匠は宣伝上手だし。 平日はお客さんが来ないことはあっても、土日は忙しくなりますね」

今日は梨奈も彫光喜も、7時間施術した。

多少空き時間を間に挟んだとはいえ、かなり疲れる。

今日は空き時間にも、師匠に頼まれて針を作っていた。

目への負担も大きい。

最近梨奈は少し視力が低下してきた。

タトゥー、入れ墨は細かい作業なので、目を酷使する。

これ以上視力が落ちれば、クルマの運転時にメガネが必要になるかもしれない。

できればメガネをかけたくないので、目のストレッチなどをしっかりやらなければと思う。

ちゃんこ定食を食べ終えると、

「実は今日、師匠に針を作ったんだけど……」

と梨奈は本題に入った。

個室とはいえ、万一声が外に漏れるといけないので、梨奈は声を潜めた。

「やっぱりそうだったんか。 でも、それ、ちょっとまずいね。 いくら新品の針でも、オートクレーブにかけずに使うのは」

「まだ針はいいんです。 新品だから。 心配なのは、チューブなの。 チューブは使い捨てにせず、繰り返して使うから、ノズルの部分に血液などがかなり付着しています。 いくら塩素消毒剤で洗っても、肝炎ウイルスなどは完全には死滅しない恐れがあるから。 師匠は塩素消毒剤で十分だと言いますけど。 でもやっぱりオートクレーブで滅菌しなくては」

梨奈の話を聞いて、彫光喜は考え込んでしまった。

滅菌をおろそかにすることは非常にまずい。

針やチューブをオートクレーブにかけるのは彫り師の常識といえる。

オートクレーブは飾りで置いてあるわけではない。

衛生管理のことは、いずれ機を見て師匠に問い質してみようと話し合った。

その後、彫甲も彫青龍もオートクレーブを使う場面を見かけるようになった。

特に梨奈や彫光喜が諌言したわけではないが、梨奈とのやりとりで、ほんの30分足らずのことで安心が得られるのなら、使うべきだということに得心がいったのだろう。

彫甲は非常に利に聡いので、そのほうが得策だと思えは、速やかに改善する。

下手に諫めれば、彫甲は意固地になってしまう。

最初に一言声をかけただけで、その後何も言わなかったことがかえってよかった。

梨奈が針を作成したあと、これ見よがしに、オートクレーブにかけて、滅菌パックに入れたものを渡したことも奏功したのかもしれない。

とにかくよかったと梨奈は安心した。

肝炎で騒動が起こってしまってからでは、取り返しがつかない。

それからしばらくは特に気になるようなことは起こらなかった。

コージは何もなければ、連絡をしなくてもよいと言ってくれる。

いちいち定期的に連絡を入れるのは、いかにもスパイみたいでいやだった。

「『便りのないのはよい便り』ということですね」

とコージは笑っていた。

夏は海などでタトゥーを披露したい、という人が多く、彫甲入れ墨道場でも客が増えてくる。

予約した日に、真っ赤に日焼けした肌でやってきた客がいた。

その客にはさすがの彫甲も、日焼けによる炎症が完全に治まってから出直せ、と断った。

施術後も10日以上は日に当てないよう、指導している。

だから海水浴に行く予定があるのなら、少なくともその半月以上前に施術するように勧めている。

彫甲入れ墨道場は、盆休みの期間に2日だけ休業した。

バイクギャングのバーベキュー大会をその休みの日に開いてくれた。

盆休みの期間なので、全員が参加できた。

場所は去年と同じ赤羽海岸だ。

今回は彫光喜も参加した。

梨奈は彫光喜が運転するR2で集合場所に行った。

疾風韋駄天会の主要メンバーも現地で合流した。

今回は大人数になったので、サーファーなど他の人たちに迷惑をかけないよう、気を遣った。

天気は曇っていた。

けれども直射日光がないので、日焼けを心配することなく、タトゥーを露出することができ、かえって好都合だった。

「あれからもう1年が経ったんだな。 早いもんだ」

達義が感慨深げに言った。

「そうですね。 最初は大乱闘だったけど、結局雨降って地固まる、かな。 あんたたちに出会えて、よかったですよ」

疾風韋駄天会元リーダーの高浜が応えた。

高浜は現在、自動車関連の工場に勤めている。

今は一般の従業員だが、将来独立して会社を興したら、タトゥーを彫ってほしいと梨奈や彫光喜に申し出ていた。

鈴木や本田、川崎紀正も来ていた。

ほかにも何人か梨奈や彫光喜にタトゥーを彫ってもらったメンバーが参加した。

バーベキューをつつきながら、みんなは懇談した。

彫甲が梨奈と彫光喜の恋愛を認めてくれたことが最初の話題になった。

二人はいつ結婚するのかと冷やかされた。

二人は今、道場から近い密柑山の賃貸マンションに、一緒に住んでいる。

「牡丹さんも本職の彫り師になってしまったし、本当にすごいですね。 あたいも早く彫り師になりたい」

洋子はまだ梨奈のことを牡丹と呼んでいる。

洋子だけではなく、みんなにとって、梨奈は“牡丹”だった。

ちょうど1年前、同じ赤羽海岸でみんなにつけてもらった名前だ。

「もうすぐ春日井道場ができて、八事の人数が減るので、まもなく新しい弟子を募集する予定よ。 師匠に訊いたら、弟子の丸刈りは決まりだから譲れないけど、もう頭に入れ墨は彫らないと言ってたわ。 今度春日井道場に移る二人は、もう髪を伸ばす許しをもらっているの」

「そうなの。 あたい、どうしようかな。 丸坊主はちょっと考えちゃうけど、頭に彫られないなら、弟子入りしようかしら」

「弟子入りしろよ。 ヨーコの丸坊主姿、見てみたい。 どうせ今プータローみたいなもんだろ。 女の場合はプーコかな」

「それなら俊夫もバリカンで頭刈ってやる」

洋子は右手の指でじゃんけんのはさみを作り、本田の頭を刈る真似をした。

「でも、ヨーコ、本当に弟子入りする気があるなら、師匠に頼んでみるわ。 今、絵の勉強、頑張っているんでしょう」

「うん。 お願いします。 坊主頭にされても、我慢します。 牡丹さん見てると、すごく励みになります」

 「はげ、みになりますか?」

梨奈はかつらをとって、冗談を言った。

みんなが愉快そうに笑った。

梨奈は最近七海たちにも会う機会が少なくなっている。

今日は久しぶりにみんなと楽しい時間を過ごせた。

彫光喜も仲間として溶け込んでおり、そのことも梨奈は嬉しかった。

8月末に、彫甲春日井道場のリフォームが完成し、予定どおり、彫青龍と彫大海が赴いた。

春日井道場は古い平屋の一軒家だ。

部屋が2つと広いリビングルームがある。

リビングルームはパーティションで仕切り、二人の仕事部屋にする。

玄関に近い4畳半の部屋を待合室とし、北側の1室は住み込みで道場を管理する、彫大海の部屋となる。

他にキッチンとトイレ、バスがついている。

庭は駐車場に改造した。

彫大海のコルトを置いても、まだ2台駐車することができる。

もしクルマで来る客が増えて、駐車場が足りなくなれば、彫大海は近くの駐車場を自分のクルマ用として借りるつもりだ。

彫青龍は住み込みを嫌い、天白区のアパートから通うことにした。

通勤時間は、軽ワゴンで40分ほどだ。

1日八事道場を休みにして、二人の引っ越しを手伝った。

エステベッドや施術用の道具などを、武甲山から借りたライトバンに積み込んで運んだ。

乗り切らない分は、彫大海のコルトに積んだ。

大海の私物は、すでに運んである。

八事道場で使っていたオートクレーブは、春日井道場に持って行った。

八事道場では新しいフルオートのものを購入した。

最近は彫甲も彫青龍も、針やチューブをきちんと滅菌している。

そのことはコージを通じて、彫浪、彫筑に知らせてある。

彫筑も衛生面に不安があるという噂を聞いて心配していたので、ひとまず安心したようだ。

彫甲は引っ越しの作業について、てきぱきと指示をした。

はちゃめちゃ師匠と言われても、このようなときには頼りになる。

引っ越しの後片付けが終わったあと、5人は近くの焼き肉屋に行って、彫青龍、彫大海独立の祝賀会をした。

「青龍さん、おめでとうございます。新しい道場、どんどん発展することを祈っています」

梨奈がコップにビールを注ぎながら祝いの言葉を述べると、彼は珍しく笑顔になって

「ありがとう。彫奈も頑張れよ」

と返礼した。

「最初はちょっと苦しいかもしれんが、道場が軌道に乗るまでは我慢だ。 頑張れよ。 俺も春日井道場の宣伝をしておいてやるからな。 光喜と彫奈も、一生懸命やれば、いつか夫婦で道場を持たせてやる」

乾杯のあと、彫甲は満面に笑みを湛えた。

乾杯のとき、彫光喜は帰りのライトバンの運転があるので、アルコールを飲めなかった。

光喜はコーラで乾杯をした。

彫青龍は髪を伸ばし始めたが、彫大海は丸刈りのままだ。

大海は丸刈りが似合っているし、そのイメージが定着しているので、ずっと丸刈りでいくという。

彫甲は終始上機嫌だった。

二人の弟子が独立し、新しい道場ができたことがよほど嬉しかったのだろう。

そんな彫甲を見て、梨奈はやっぱり師匠は、弟子思いの師匠なのだと思った。

八事道場で新しく弟子を採る、という話が出たので、梨奈は山葉洋子のことを話してみた。

「元ヤンか。 それじゃあ一度連れてこい。 面接をしてやろう」

彫甲はもし弟子になれば、女性でも頭は丸めてもらうが、入れ墨は彫らないことを確約した。

背中や腕に大きく彫ることになるだろう。

それについては、洋子は了承している。

むしろ全身に彫ってみたいと言っている。

 彫甲の了承をとり、洋子に携帯で電話をすると、

「いつでも行きます」

と嬉しそうに応えた。

明日は木曜日で道場が休みなので、明日の午後1時に来てもらうことにした。

梨奈、彫光喜も面接の場に居合わせることになった。

洋子は蒲郡市に住んでおり、少し遠いので、遅刻しないように釘を刺しておいた。

彫奈の初めての客である真理子も、万一今勤めている会社を辞めさせられたら、タトゥーアーティストになりたいと言っている。

梨奈が独立して道場を持たせてもらったときに、まだタトゥーアーティストになりたいという気持ちが真理子にあれば、そのとき改めて話を聞こうと思っている。

彫青龍、彫大海の祝賀会は、盛況のうちに終わった。

彫光喜は酔った彫甲をライトバンに乗せ、自宅まで送った。

その後R2に乗り換えて、二人のマンションに向かった。

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