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刺青師牡丹-第8話 弟子入り

 
 
第8話 弟子入り
 
▼前回までのあらすじ------------------------------------
ついに、念願のプロデビューを果たした、牡丹。
しかし、早速クレーマーの様な客があらわれて・・・
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「ひでぇ話だな。その山木とかいうやつのおかん、ふざけとるがや。新年早々失業なんて、とんでもないぜ」
 
梨奈の話を聞き、政夫は激怒した。
 
 
「それで梨奈、ピオニー辞めちゃったの?」
 
七海も心配そうに言った。
 
 
今はバイクギャングロッカーズの練習が終わり、メンバー全員でファミレスで食事をしている。
 
梨奈はそこでことの顛末を話した。
 
 
「しかたなかったの。私が辞めないと、ピオニー全体に迷惑がかかるし。もちろん店長さんは思いとどまるように言ってくれたけど、でもやっぱり私が身を引かなければ、その場が収まりそうではなかったし」
 
「だけどひどいわ。わるいのはいい加減なケアをしてた自分の息子じゃないの。私も腹が立っちゃう。梨奈さんも徹底的に抵抗してやればよかったのに」
 
沙織も憤懣やるかたない、というふうだった。
 
 
「それで、これからどうするんだい? もしよかったら、俺たちもバンドの知り合いをつてに、タトゥー彫りたい人、紹介してやるよ。ワンポイント入れたい、というやつが何人かいるから。今の牡丹なら、一時間10,000円取ってもいいんじゃないかな?」
 
達義が梨奈にプロのタトゥーアーティストとして、自宅で開業することを提案した。
 
 
「ありがとうございます。もしお客さんを紹介していただけるなら、よろしくお願いします」
 
「だけど、フェニックスみたいな有名なスタジオならともかく、個人のタトゥーアーティストだと、なかなか経営厳しいみたいだね。何せ今は不況で、タトゥー入れたくてもできない、ってやつ、多いから」
 
「そうだな。俺が知っとる彫り師も、腕はまずまずだけど、なかなか客が来なくて、ほかにアルバイトしないと食ってけないって言っとるし」
 
富夫と康志も最近のタトゥーアーティストの厳しさに言及した。
 
 
「そういえば、八事の彫甲とかいう彫り師が、女性彫り師を募集してたとか聞いたけど。知り合いがそこで彫ってもらったときにそんなことを聞いたと言っとったぜ。けっこう腕もいいし、おもしろいおっさんだったとそいつが言っとった。八事なら梨奈のアパートから近いから、一度話だけでも聞いてみたらどうだ?」
 
そう言いながら政夫がスマートフォンで彫甲を検索した。
 
 
「あったあった。こいつだ。八事駅から徒歩五分。“女性彫り師募集”とある」
 
政夫は見つかった彫甲のホームページを梨奈に見せた。
 
 
スタジオは地下鉄鶴舞線と環状線が交差する、八事駅の近くだ。
 
梨奈のアパートからも、実家からも便利な位置にある。
 
八事は高級住宅地であり、また近くに大学が多く、学生の街でもある。
 
 
梨奈は彫甲のことは全く知らないが、ホームページにある作品を見ると、非常にうまいと思った。
 
 
フェニックスタトゥースタジオはどちらかといえば、洋物が主体だ。
 
コージは和柄も引き受けるが、ジュンはアメリカンタトゥーといわれる洋物を得意としている。
 
沙織の背中を飾る天女も、和柄とはいえ、洋風なセンスを取り入れている。
 
梨奈の鳳凰もそうだ。
 
 
それに対して、彫甲は和柄が多かった。
 
もちろんワンポイントの洋物も素晴らしかった。
 
しかしそのホームページに載っていた彫甲の顔は、長髪で髭を伸ばし、あまり品がいい顔だとは思えなかった。
 
けれども顔だけで人を判断してはいけないと反省した。
 
芸術家らしい顔と言えないでもない。
 
梨奈は一度彫甲のところに話だけでも聞きにいってみようと思った。
 
けれども、その前にフェニックスに挨拶に行くのが筋だろう。
 
これまでコージやジュンにいろいろとお世話になっているので、素知らぬ顔で彫甲のところに行くわけにはいかない。
 
 
「でも、ピオニーはけっこう退職金くれたから、すぐ生活に困るということはありません。これからどうするか、いろいろ考えてみます。明日にでもフェニックスに挨拶に行ってきます。店長さんは、二、三年経ってほとぼりが冷めたころ、もしよかったらまた来てください、と言ってくれましたし。ほんとに店長さんは私によくしてくれました。私のこと、とても期待してくれたのに、こんな形で退職になって、残念です」
 
そう言いながら、梨奈は涙を流した。
 
新しく仕入れたドイツ製のデジタルマシンも、餞別として梨奈に譲ってくれた。
 
カートリッジなど消耗品も社員価格で安く売ってくれるという。
 
 
ピオニーの人たちも、バイクギャングの仲間たちも梨奈のことを心から心配し、親身になってくれた。
 
梨奈はそのことがありがたかった。
翌日、梨奈はフェニックスタトゥースタジオに寄った。
 
 
「梨奈さん、ピオニー辞めちゃったんだって?」
 
ジュンが心配そうに声をかけた。
 
ピオニーを辞めたことはもう電話で報告してあった。
 
 
「そういうトラブル、タトゥーの世界でもたまにあるんですよ。まあ、多くはアーティスト側の衛生への認識が不十分で、針を使い回してお客さんが肝炎などに感染してしまったとか、年齢確認をおろそかにして、18歳未満に彫ってしまったとかいう、言い逃れができないことなんだけど。そういうことが起こると、タトゥー業界全体に逆風が吹くから、アーティストとしては十分注意してほしいんだよな。でも、梨奈さんの場合は、本当に災難だったね」
 
コージも梨奈に同情した。
 
 
「梨奈さんだったらぜひうちに来てほしいと思うんだけど、リョーコが間もなく三人目のアーティストとしてデビューする予定でね。以前のようにお客さんがたくさん来ればいいけど、今は不景気だから、アーティストを四人も置く余裕がないんですよ」
 
「お気遣いありがとうございます。リョーコさんもプロデビュー、もうすぐなんですね。おめでとうございます」
 
梨奈はリョーコに祝いの言葉を言った。
 
リョーコは恥ずかしそうに俯いた。
 
 
「梨奈さん、これからどうするんですか? 何か当てがありますか? それとも自宅で開業するとか。梨奈さんの腕なら、十分やっていけるとは思うけど、でも個人のアーティストはけっこう厳しい状況ですから」
 
ジュンが梨奈のこれからを尋ねた。
 
 
「そうですね。バイクギャングの人たちも言ってましたけど、やっぱりアーティストとしてやっていくのは厳しいみたいですね」
 
「うちは今新しくアーティストを雇うことはできないけど、うちの本家にあたる彫浪師匠に訊いてみようか? 以前彫り師募集してましたから」
 
そう言ってコージは師匠に彫り師募集について、電話で問い合わせた。
 
しかし最近新しい弟子が二人入ったので、今は募集していないとのことだった。
 
コージは以前、彫浪のもとで修業し、独立してフェニックスタトゥーを開設した。
 
ジュンはフェニックスタトゥー設立後間もなく、アーティスト見習いとして採用された。
 
 
梨奈はコージに丁重にお礼を言った。
 
そして彫甲のことを尋ねてみた。
 
 
「実はバイクギャングのマサさんが、彫甲さんという彫り師さんが女性彫り師を募集してるというので、一度訪ねてみたらどうか、と言ってるんですが。何でもマサさんの知り合いが彫甲さんで彫ってもらったんだそうです」
 
「ああ、八事の彫甲さんね」
 
コージはすぐに反応した。
 
 
「ご存じですか?」

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  • Posted:2013年05月17日 10時00分 / Edited:2013年05月16日 23時16分
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刺青師牡丹-第7話 窮地

 
 
第7話 窮地
 
▼前回までのあらすじ------------------------------------
思いがけない海辺での写真撮影によって、大きなトラブルを呼んだ梨奈。
仲間の直美が波の高い海に転落するという一大事を、暴走族のヘッドである高浜の命令により一命を取り留める。そんなトラブルもありつつ思い出に残る夏を過ごしながらも、梨奈が牡丹として休日にタトゥーを入れてきた人数も大分増えてきた。そんな中、ピオニーではボディーアート部門として、牡丹がプロデビューする話が浮上する。そして12月、プロとして上々の滑り出しだった梨奈の元に、トラブルの種が舞いこむ・・・。
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梨奈は年末年始に自宅に戻った。ときどき家に帰りはするが、転居してから自宅に泊まるのは初めてだった。母親は「お父さんにはいれずみ、見つからないようにね」と最初に注意した。父親はまだ梨奈のタトゥーには気づいていない。
 
去年は正月に政夫と七海の三人で伊勢神宮に初詣に行ったが、今年はバイクギャングのメンバーで、一月三日に熱田神宮に行くことになった。ただ、康志と直美は旅行に出かけて、参加できなかった。

初詣は、七海、沙織、淑乃は晴れ着にコートを羽織るという装いだが、梨奈は赤いウールのセーターにダウンジャケット、下はジーンズだった。

初詣を済ませたあと、みんなは達義のアパートに行った。今は沙織と二人で住んでいる。そこでささやかな新年会が催された。今夜はすき焼きパーティーだ。

乾杯のとき、達義が秋に沙織と結婚することを発表した。それを聞き、みんなが盛り上がった。結婚後もしばらく、沙織は今勤めているクラブで働く。達義はもちろんバンド活動を続ける。しかしあと何年続けられるだろうか?

富夫と淑乃も来年ぐらいには結婚したいという。達義は中小企業とはいえ、正社員で収入も安定している。しかし他の三人は契約社員など、非正規雇用であまり収入が多くない。身分も安定しているとはいえない。結婚し、家庭を築く責任ができれば、そういつまでもバンドを続けることはできない。

「俺たち、高校時代から続けてきたバイクギャングも、あと一、二年、というところかな。いつまでもバンドやってるわけにいかないし。みんなこれから結婚し、家庭を築き、子どもを育てるという義務ができるからな。収入などもしっかり得られるようにしなければならんから」

リーダーの達義がしんみりと言った。

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  • Posted:2013年05月03日 11時02分 / Edited:2013年05月03日 11時49分
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刺青師牡丹-第6話 トラブル

 
 
第6話 トラブル
 
▼前回までのあらすじ------------------------------------
 
思いがけない海辺での写真撮影によって、大きなトラブルを呼んだ梨奈。
 
仲間の直美が波の高い海に転落するという一大事を、暴走族のヘッドである高浜の命令により一命を取り留める。
 
その後、強面の高浜達とは和解し、刺青師牡丹を応援してくれることになった。
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海辺での写真撮影は予想外の反響があった。
タトゥーコンベンションなどで写した写真をアップされた場合は、一部のタトゥーマニアの間で話題になる程度だろう。
けれどもサーフィンの名所で行われた、全身にタトゥーがある女性の撮影会の写真や動画、ということで、一般の人たちも関心を抱いた。
その現場にいなかった人たちも、さらに梨奈の写真や動画をコピーして、それをどんどんネットに広めてしまった。
 
インターネットの掲示板などで、梨奈は
「後先考えずに、全身に入れ墨をしたバカ女」
と非難された。
 
「常識がない」
 
「日本では入れ墨は受け入れられないのに、バカなことをする」
 
「入れ墨するやつらは、みんな頭がわるい」
 
というような否定的な書き込みが多くなされた。
 
中には写真の人物がピオニーのアートメイクスタッフということを知っている人がいて、わざわざそのことをツイッターに投稿する人もいた。

日本よりタトゥーに関心が高い海外でも、多くの人が梨奈の動画を視聴した。
宣伝による収入を得るため、動画をいろいろと加工してネットに流す者まで現れた。
 
騒ぎの原因を作った富夫は、梨奈に申し訳ないと何度も謝罪した。
けれども梨奈は富夫を恨むことをせず、落ち込んでいた富夫を逆に励ました。
掲示板などを見て、知人の一人が梨奈のタトゥーを知ってしまった。
彼女は他の友人にもそのことを配信し、結局梨奈が全身にタトゥーをしていることを、多くの友人に知られてしまった。
 
それでもその騒動はやがて下火になった。
 
 
ピオニー店長の和美もインターネットを見て、梨奈のタトゥーが話題になっていることに気づいた。
それまで梨奈のタトゥーを容認していた和美も、騒ぎが大きくなってしまったことを懸念した。


今のところ特に問題はない。
 
それどころか、
 
「きれいなタトゥーがあるスタッフの方は、腕もよく、とても親切でした」
 
というような書き込みがいくつもなされて、
 
「タトゥーがあるアーティストさんにお願いしたい」
 
と梨奈を指名する客が増えた。
 
 
一〇月中旬に “大名古屋タトゥー大会”が、昨年と同じ大須の会場で開催された。
梨奈は久々に日曜日に休暇をもらい、七海と共にタトゥー大会に参加した。
 
今回もバイクギャングロッカーズがライブを行った。
ライブのときはいつも特攻服を着ているが、タトゥー大会ではタトゥーが見えるよう、ノースリーブのシャツ、または上半身裸だ。
 
ヘアはモヒカンにしたり、派手に染めたりしている。
この日のためだけの、特別のヘアスタイルだ。
 
翌日には仕事があるので、タトゥー大会が終わればすぐ、地味な色に染め直し、また丸刈りにする。
さすがに派手な髪の色やモヒカンカットで職場に出ると、上司のひんしゅくを買う。
 
赤羽海岸で知り合ったサーファーたちや韋駄天疾風会のメンバーも来てくれ、久闊を叙した。
梨奈や七海たち、バーベキューに参加した仲間全員が親しく挨拶を交わした。
 
疾風韋駄天会のメンバーは、真夏の赤羽海岸で応戦したときは、ティーシャツの上に薄手の甚兵衛などの軽装だったが、今回は皆特攻服を着ていた。
特攻服には日の丸や
 
「愛国」
 
「神風」
 
などの刺繍が施されていた。
レディースも特攻服姿だ。

バイクギャングのメンバーは自分たちよりずっと年上なので、疾風韋駄天会の面々は恭しい態度で対応した。
彼らは納得さえすれば、礼儀を重んじる。
高浜は二一歳だが、それ以外は多くが未成年だ。
高浜はヘッドを退き、別の者に譲っていた。
 
「いい年こいていつまでも突っ張っていられないから、そろそろ正業に就きますよ」
 
高浜はバイクギャングのメンバーたちに、照れくさそうに言った。
 
梨奈は今回、ジュンやコージに要請され、水着に近い服装をしていたので、注目を浴びた。
 
去年見かけた、頭に牡丹を入れているスキンヘッドの女性も来ており、
 
「あら、あなた、去年ジュンさんに、お尻に牡丹入れてもらってた人ね。あれから全身に彫ったの。すごいね」
 
と梨奈に話しかけてきた。
彼女は腕や背中などにもタトゥーを入れている。
 
「頭の牡丹、きれいですね。頭は痛くなかったですか? ふだんは髪を伸ばしているのですか?」
 
梨奈は彼女に質問した。
 
「頭はラインはそれほど痛くなかったけど、ぼかしが痛かった。やっぱグラデーションをつけるため、同じところを何度も針でなぞられたからかな。さすがにふだんは髪を伸ばして、タトゥーを隠してるよ。
髪が伸びるまでは、ヅラかぶってる」
 
そう言ってスキンヘッドの女性は笑った。
頭の牡丹はジュンに彫ってもらったという。
梨奈は彼女と電話番号やメールアドレスの交換をした。
 
タトゥーコンテストでは、ジュンが彫った鳳凰や牡丹のタトゥーは高い評価を受け、全身の部で梨奈が優勝した。
多くの人から写真を写させてほしいとリクエストされた。
またタトゥー専門誌のカメラマンからも、要請を受けた。
タトゥー専門誌には、“タトゥーアーティスト牡丹”として紹介してくれるという。
 
この日の梨奈は一段と輝いていた。

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  • Posted:2013年04月19日 10時00分 / Edited:2013年05月03日 11時33分
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