全国のタトゥースタジオ・彫師検索!現在、TATTOOスタジオ444店舗を掲載中。刺青/タトゥーに関するコラムもあり!

タトゥーナビ

タトゥーコラム

タトゥースポット

刺青師牡丹-第11話 悲願



第11話 彼岸 ▼
前回までのあらすじ----------
 
-------------------

三月中に梨奈の胸割を仕上げろ、という彫甲の命令をうけ、彫光喜は梨奈の胸割の入れ墨に専念した。

梨奈に与えられた課題は、彫光喜の背中を日本伝統の彫り物の様式、額彫りとして仕上げることだった。

梨奈は果敢に取り組んだ。

初めて彫光喜の背中に菊の花の筋彫りをしたときには、すでに彫甲の作品である騎龍観音が入っており、それを飾るだけ、ということで、ある意味気が楽だった。

もちろん師匠の絵を飾るのだから、下手な絵は彫れない、というプレッシャーはあった。

ところが額彫りのラインを入れるため、背中から腰、臀部、太股と大きな範囲をデザインしなければならないことになったとき、梨奈は戸惑った。

和彫りという巨大な壁を眼前にしているような感じだった。

刺青師牡丹-第11話 悲願の続きを読む

  • Posted:2013年06月28日 10時00分 / Edited:2013年07月01日 17時11分
  • 刺青師牡丹

刺青師牡丹-第10話 愛し合う二人



第10話 愛し合う二人
前回までのあらすじ----------
彫甲の門下生となり、修行をスタートする梨奈。
門下生になり、はじめて彫ることになったのは彫光喜。
嬉しい気持ちと、緊張でいつもより一層素晴らしい出来の刺青が彫れたのだが、
梨奈の才能に嫉妬する先輩彫師の不運な動きも・・・?
-------------------

頭の入れ墨が完成すると、梨奈は左右の腕に、牡丹と蝶を彫られた。

「おまえには正統な和彫りを背負ってもらいたいからな」

そう言って彫甲は梨奈の意見を無視して、胸から腕にかけ、胸割という和彫りの様式でラインを入れてしまった。

腕は手首のすぐ上まで、八分の大きさだ。

つまり肩から手首までの一〇分の八ぐらいのところまで絵が入っている。

もう半袖の服は着られない。

だが彫甲は筋彫りだけで色づけはしなかった。

「光喜、彫奈の腕の仕上げはおまえに任せる。四月までに仕上げろ。これはおまえの試験だ。きれいに仕上げたら、おまえにも客を彫らせてやる」

彫甲は彫光喜を呼んで指示をした。

四月までだと、あと一ヶ月ちょっとしか時間がない。

また、梨奈には彫光喜の背中の騎龍観音を完成させるように命じた。

騎龍観音は抜き彫りで、周りを黒く染める額彫りという彫り方ではないので、梨奈の裁量で額を入れろと課題を与えた。

騎龍観音を飾る、菊や牡丹などの花を入れることも許可をした。

いよいよ梨奈に本格的な和彫りの修業が始まった。

梨奈と彫光喜は、お互い話し合いながらどのように進めていくのか、方針を決めた。

彫青龍は

「おまえら、相談にかこつけて、いちゃいちゃするんじゃないぞ。何かあれば、罰金50万円だからな」

と二人を牽制した。

もし彫青龍に二人の関係を知られれば、大変なことになる。

彫光喜の課題はきれいに梨奈の身体に色をつけること。

黒の濃淡によるぼかしなども課題だ。

梨奈の場合は、まだ筋彫りだけの彫光喜の騎龍観音に、日本伝統の和彫りとして、額をつけること。

そして色を入れ、きれいに完成させる。

「二人とも師匠からすごい課題を与えられたな。でも、それをやり遂げたら、たぶん二人とも師匠から認められて、彫り師としてやらせてもらえると思うぞ。頑張れよ。こりゃ、俺もうかうかしとれんがや」

彫大海は彫光喜と梨奈を励ました。

彫光喜の場合はただ色をつけるだけだから、今日は梨奈の課題について話し合った。

彫大海も空き時間だったので、一緒に相談に乗ってくれた。

彫大海には今、大きな図柄を彫っている客が三人いる。

それ以外に飛び込みの客があれば対応することがある。

里奈はまず騎龍観音の周囲の空いているところに、花を追加することにした。

左腕に梨奈が彫った菊が入っているので、花は菊に決めた。

菊を彫り終えたあとで、額彫りのラインを入れる。

方針はそのように決まった。

あとはどのように額彫りのラインを入れるかの問題だ。

雲や波、稲妻などを効果的に入れて、図柄を引き立たせなければならない。

梨奈はデジタルカメラで彫光喜の背中の図柄を写させてもらい、その写真をもとに額彫りの研究をすることにした。

以前、彫光喜の左腕に菊を彫ったあと、梨奈は道場専用に新しくデジカメを購入した。

梨奈はカメラにはあまり詳しくないので、一眼レフではなく、安いコンパクトタイプにした。

三年以上前に購入したデジカメに比べれば、画素数など、機能面では格段にアップしている。

機種選定にはカメラに詳しい富夫の意見を聞いた。

今のデジカメなら安い機種でも、タトゥーの記録用として、性能的には十分だと言いながらも、あまり明るくないスタジオで、ストロボなしできれいに写るように、高感度画質が優れている裏面照射型のCMOSセンサーを採用した機種を推薦した。

タトゥー専用なら、高倍率ズームも必要ない。

最初に梨奈が彫光喜の練習台となった。

彫光喜は針やマシンのチューブなどをオートクレーブで滅菌した。

二階の部屋の暖房を強め、梨奈は作務衣を脱いだ。

そして下着のみになった。

まずは左腕の黒のぼかしから彫ることになった。

愛する男性に裸に近いかっこうを見られ、梨奈は恥ずかしさで興奮した。

胸の部分を彫るときは、上半身裸にならなければならない。

「彫奈、いきますよ」

彫光喜は梨奈の左手首に最初の針を下ろした。

「ああ、私は愛する人から、一生消えない愛の証をつけてもらっているのだ。嬉しい」

梨奈は心の中で呟いた。

道場では二人の気持ちをあらわにできないが、梨奈には彫光喜に彫ってもらえるということが、とても幸せだった。

針で責められるのも、心地よい痛みだった。

彫光喜に彫ってもらっている間、梨奈の身体は燃えていた。

施術は夕食の準備の時間まで続いた。

手首の周りがぐるりと黒く染まった。

それを見た梨奈は、私も完全に彫り師の身体になってしまったのだと思った。

もはや彫り師以外の職業に就くのは難しい。

こうなった以上は、ジュンさんにも負けないぐらいの女性彫り師になろう。

梨奈は決意を新たにした。

刺青師牡丹-第10話 愛し合う二人の続きを読む

  • Posted:2013年06月14日 10時00分 / Edited:2013年06月13日 22時19分
  • 刺青師牡丹

刺青師牡丹-第9話 修業の日々

第9話 修行の日々 ▼前回までのあらすじ------------------------------------
梨奈は前回の一件がありピオニーをやめることになり落ち込んでいると、バイクギャングの仲間達に、彫甲という和彫りを得意とする彫師が、女性彫り師を募集をしてると聞き弟子入りを勧められる。 そして今までお世話になっていたフェニックスタトゥースタジオに挨拶に行き、スタッフに「たとえ梨奈さんが他の一門に行っても、僕はこれからも梨奈さんのこと、ずっと親友だと思っていますから。」と勇気づけられる言葉をもらい、彫甲の元へ向かった梨奈。 しかし女性としては屈辱的な洗礼を受けるも弟子入りを決意し、新たな刺青師としてのまた一歩を進めた。 また、それと同時に“彫甲入れ墨道場”で出会ったある男性に対する女性とのしての一歩も。。。 ----------------------------------------------

翌朝、梨奈は早めに起きて、入浴した。

浴室の鏡で自分の頭を眺めた。

つるつるだった頭はほんの少し髪が伸びてきた。

頭を触ると、ざらざらする。

牡丹のラインはくっきりしている。

特に一部は額にかかっており、髪が伸びてもカバーしきれない。

これはもう前髪で隠すしかないが、何かの拍子に見えてしまいそうだ。

同じく頭に牡丹の花を入れている聡美は、丸刈りにしたときは髪が伸びるまでかつらをかぶっているという。

私もかつらを作らなくてはと考えた。

道場にいるときはいいが、休みの日に外出ができない。

それに髪を伸ばせるのは、一人前の彫り師になってからだという。

まだだいぶ先のことだ。

風呂から出た梨奈は、トーストとゆで卵、みかんとコーヒーで簡単に朝食を済ませた。

あまり食欲がなかった。

そのあと、昨日メールをもらったバイクギャングの仲間たちに返信をした。

携帯電話のカメラで自分の頭を写し、写メで送信した。

多くの人は出勤の途についているが、みんな梨奈が送った写真を見て、驚いていた。


午前一〇時前に彫甲の道場に着いた。

門下生は一〇時までに道場に入るように指示されている。

強い寒波が来ており、雪がちらつく寒い日だった。

梨奈は暖かいフリースの帽子をかぶった。

髪がないので、ぶかぶかしていて、強い風が吹くと帽子が吹き飛ばされそうになった。

二階に上がると、彫甲は梨奈に新しい作務衣を二着渡した。

女性用で赤っぽい色だった。

道場では作務衣がユニフォームだ。

「作務衣だけで寒かったら、上に何か羽織っていいぞ。二着で足りなければ、自費で注文しろ」

彫甲は着替えたら、頭の牡丹に色を入れるので、下の仕事場に来るように言った。

タトゥーを彫るのも彫られるのも好きな梨奈だが、頭だけはいやだと思った。

しかしもうラインが入ってしまっている以上、どうせならきれいに仕上げたい。

中途半端なタトゥーはみっともない。

正午まで二時間近く、梨奈は施術を受けた。

頭頂部の一番大きな牡丹に赤い色を入れてもらった。

それほど痛いとは思わなかった。

ただ、頭皮のすぐ下が頭蓋骨なので、彫ってもらうときに、非常に響いた。

食事の前に、梨奈の頭を見た彫光喜が、「真ん中の牡丹、色が入っちゃいましたね」
と声をかけた。

彫光喜は丸刈りの頭を隠すため、緑色のバンダナをくれた。

そして、先ほど色を入れた部分に触れないように、頭に着けてくれた。

梨奈は彫光喜の心遣いがありがたかった。

「光喜さん、ひょっとしたら私に気があるのかしら。だとしたら嬉しいわ」

梨奈はほんのりとした期待を抱いた。

食事のあと、少し休憩してから、梨奈は彫光喜と共に一番弟子の彫青龍について、和彫りの見切りや額の付け方を学んだ。

そのあと、彫甲が描いた鯉を模写するように指示された。

「光喜、おまえは鱗描きが得意だったな。彫奈に彫甲流の鱗の描き方を教えてやれ」

彫青龍は彫光喜に命じて、一階に下りていった。

夕方四時過ぎに、彫光喜と夕食の準備を命じられた。

梨奈は近くのスーパーマーケットに食材を買いに行った。

買うものは彫光喜がメモで示してくれた。

一度の買い物で、二日から三日分の食材を買い置きしておく。

五人分なので、けっこうな量になる。

食費は一日500円徴収されるが、二食で500円なら安かった。

今後、食事の支度は彫光喜と梨奈の仕事となった。

作務衣などの洗濯は梨奈の役割だ。

夜八時に道場を閉め、掃除や片付けをすると、帰宅は一〇時過ぎになる。

ときには仕事が延長し、八時に道場を閉められないこともある。

道場を閉めたあと、ときどき彫大海が道場のホームページの更新をしている。

外見に似合わず、彫大海はパソコンなどのOA機器に強いという。

梨奈の写真もホームページに載せてくれた。

今日は四人依頼者が来て、売り上げは120,000円だと彫甲は言っていた。

夜六時から、彫青龍もワンポイントの客を彫った。

彫甲の値段設定は、フェニックスタトゥーよりも高い。

月平均の売り上げは250万円ほど、道場の家賃や光熱水費、弟子が彫った場合の取り分などの必要経費を引いた分が、道場の収入となる。

弟子が彫った場合、弟子の取り分は料金の六割だそうだ。


刺青師牡丹-第9話 修業の日々の続きを読む

  • Posted:2013年06月06日 13時26分 / Edited:2013年06月10日 15時49分
  • 刺青師牡丹